研究課題/領域番号 |
26292147
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大橋 和彦 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (90250498)
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研究分担者 |
村田 史郎 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (10579163)
今内 覚 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (40396304)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マレック病 / マレック病ウイルス |
研究実績の概要 |
マレック病(MD)は、マレック病ウイルス(MDV)の感染により引き起こされる鶏の伝染性疾病である。MDは現在、ワクチンにより制御されているが、近年、野外で分離されるMDVの病原性は増強傾向にあり、ワクチン接種鶏においてもMDの発症がみられるワクチンブレイクが日本を含む世界各地で問題となっている。そこで本研究では、近年日本国内の養鶏等から検出されるMDVの分子生物学的性状を従来の分離株と比較して、さらに同定されたMDVの遺伝子多型や欠損のMDV病原性進化における役割を明らかにするために、組換えMDVクローンを作成し、鶏を用いた感染実験等で解析することを目的とした。 前年度、MDVによる病態形成に最も重要な役割を果たす分子meq遺伝子において、同定された遺伝子多型についてMeqの生物活性に対する影響を解析した。その結果、予想に反して、過去に分離されたMDVに比べて、近年分離されたMDVのMeqは、転写活性化能および形質転換能ともに低いことが示唆された。次に前年度、ワクチン株を混入させずに分離することに成功したMDV株(奈良株)を用いて感染実験を実施した。その結果、使用した奈良株は鶏に強い病原性を示すことが判明した。以上より、現在国内に広く分布しているMDVは、奈良株と同様の配列を示すMeqをコードしていると考えられるため、国内におけるMDVの病原性進化には、従来報告されていたMeq以外のウイルス性因子も関与しうることが示唆された。そこで、次世代シークエンサーを用いて、単離した奈良株の全ゲノム解析を行った。そして従来の強毒MDV等と比較して、meq遺伝子以外にも多くの遺伝子変異・欠損等を同定した。現在、同定した遺伝子変異等のMDV生物性状への影響を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度に国内の養鶏等から検出されたMDVのmeq遺伝子について、その多型が遺伝子産物の機能にどのような影響を及ぼすか検討して、予想に反する結果を得た。また全ゲノム解析によりmeq遺伝子以外のウイルス遺伝子においても従来のMDVとは異なる遺伝子変異等を同定できたので、大きな成果が得られたと考えられる。さらに単離に成功したMDV株を用いた感染実験も実施して、その病原性の確認も行えているので、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに単離したMDV株を用いた詳細な感染実験を行うとともに、全ゲノム解析を継続して行う。そして同定された遺伝子変異等について、その生物学的意義を明らかにするとともに、それらの変異等を導入した組換えMDVクローンを作成し、鶏を用いた感染実験等で解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
全ゲノム解析に集中するために感染性クローンの作成に使用予定であった恒温恒湿培養器を次年度に購入するように変更したため。また感染実験についても、共同研究機関の施設を利用したため、動物施設使用料金等が予定金額を下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、感染性クローンの作成に使用予定である恒温恒湿培養器を購入する。また全ゲノム解析のデータ解析および機能解析に係る試薬等に使用する。
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