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2015 年度 実績報告書

コウモリ由来新型レオウイルスの高度病原性獲得機序に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 26292149
研究機関大阪大学

研究代表者

小林 剛  大阪大学, 微生物病研究所, 特任准教授(常勤) (90324847)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードレオウイルス
研究実績の概要

コウモリレオウイルス(NBV)の高病原性獲得機序を理解する上で、本年度は以下の成果が得られた。
S1遺伝子にコードされるウイルスタンパク質(p10、p17、sigmaC)について各種欠損ウイルスを作製し、解析を行った。
細胞融合能を有するp10の欠損ウイルスの作製を試みた結果、p10欠損ウイルスの作製に成功した。p10欠損ウイルスは培養細胞において、細胞融合能が消失していた。p10欠損ウイルスは親株と比較して、ウイルス複製能が顕著に低下していた。これらの結果から、p10はウイルス複製に必須ではないものの、ウイルス複製の増強因子として重要であることが明らかとなった。
セルアタッチメントタンパク質sigmaCの欠損ウイルスについて解析を行った結果、sigmaCはA549細胞の感染には重要であるが、BHK-21、CHO-K1、DemKT1、L929、Vero細胞等の感染には必須でないことが明らかとなった。これらの成果は、NBVの細胞侵入機構にはsigmaCに依存する経路と他のウイルス構造タンパク質により介される複数の感染経路が存在していることを示唆している。さらに、in vivoにおけるsigmaCの意義を解析するため、マウス感染モデルを用いて野生株とsigmaC欠損ウイルスの病原性を比較した。その結果、sigmaC欠損ウイルスの病原性は顕著に低下していることが明らかとなった。sigmaCがin vivoではNBV病態発現に重要な因子であることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、NBVの高病原性獲得機序ならびに細胞侵入機構の解明を目的としている。
本年度は、株間で相同性が大きく異なるS1遺伝子にコードされるウイルスタンパク質(p10、p17、sigmaC)の解析を詳細に行った。各種タンパク質欠損ウイルスの作製を試みた結果、全ての欠損ウイルスの作製に成功し、培養細胞系ではこれらのS1遺伝子産物が複製に必須でないことを見出した。p10については、ウイルス複製の増強に重要であることから、今後、in vivoでの病原性解析が必要と考えられる。
sigmaC欠損ウイルスを用いた研究から、NBVは複数の細胞侵入経路を有することが示唆された。これらの成果は、NBV細胞侵入機構を理解する上で重要な知見である。sigmaCの培養細胞結合解析から得られた技術はsigmaCの宿主感染受容体の同定を行う上で有用な手法と考えられる。in vivoにおけるsigmaC欠損ウイルスを用いた成果は、sigmaCが主要なNBV病原性因子であることを示唆しており、NBV病態発現機序を理解する上で有用な成果である。

今後の研究の推進方策

次年度も引き続き、NBVの高病原性獲得機序ならびに細胞侵入機構の解明を目的に研究を遂行する。
高病原性獲得機序の解明に関する研究では、コウモリ由来、ヒト由来株間におけるリアソータントウイルスを作製し、ウイルス複製能、病原性について比較解析研究を行う。特に、S1遺伝子は株間で相同性が大きく異なること、sigmaCが病原性に深く関与していることから、S1遺伝子リアソータントウイルスの解析を優先的に行う。さらに、S1遺伝子産物の各種アミノ酸変異ウイルスを作製し、ウイルス複製、病原性に関与する機能領域の同定を行う。
NBV感染受容体の同定を試みる。今年度、確立に成功した培養細胞への結合評価系を用いて、アフィニティー精製によりsigmaCと相互作用する細胞膜成分を回収する。得られた候補因子について詳細な解析を行う。また、膜タンパク質を標的としたプール型shRNAライブラリーを発現するレンチウイルスにより膜タンパク質を網羅的にノックダウンした細胞株を作製し、スクリーニングを行い、目的とする受容体を同定する。sigmaCを介さない感染経路についても解析を行う。ウイルス粒子構造からsigmaB、muBがウイルス側リガンドとして予想されることから、これらのタンパク質の培養細胞結合能について詳細な解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、実験経過の都合上(cDNA発現ライブラリーを用いた感染受容体同定研究、組換えウイルスの病原性解析研究等)、繰越金が発生した。次年度は、本年度の購入できなかった消耗品、実験動物を購入する。

次年度使用額の使用計画

次年度の請求金額について、申請書に沿って、今後の推進方策を実施するために必要な高額消耗品(siRNA、cDNA発現ライブラリー等)、実験動物を購入する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Reverse Genetics for Fusogenic Bat-Borne Orthoreovirus Associated with Acute Respiratory Tract Infections in Humans: Role of Outer Capsid Protein σC in Viral Replication and Pathogenesis.2016

    • 著者名/発表者名
      Kawagishi T, Kanai Y, Tani H, Shimojima M, Saijo M, Matsuura Y, Kobayashi T.
    • 雑誌名

      PLoS Pathog.

      巻: 12 ページ: e1005455

    • DOI

      10.1371/journal.ppat.1005455

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Rapid whole genome sequencing of Miyazaki-Bali/2007 Pteropine orthoreovirus by modified rolling circular amplification with adaptor ligation - next generation sequencing2015

    • 著者名/発表者名
      Singh H, Yoshikawa T, Kobayashi T, Fukushi S, Tani H, Taniguchi S, Fukuma A, Yang M, Sugamata M, Shimojima M, Saijo M.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 5 ページ: 16517

    • DOI

      10.1038/srep16517

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Functional analysis of pteropine reovirus cell attachment protein sigmaC2015

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Kawagishi, Yuta Kanai, Hideki Tani, Masayuki Shimojima, Masayuki Saijo, Yoshiharu Matsuura, Takeshi Kobayashi
    • 学会等名
      第63回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2015-11-22 – 2015-11-24
  • [学会発表] Biological functions of orthoreovirus FAST proteins in viral replication and pathognesis2015

    • 著者名/発表者名
      Yuta Kanai, Takahiro Kawagishi, Masayuki Shimojima, Masayuki Saijo, Yoshiharu Matsuura, Takeshi Kobayashi
    • 学会等名
      第63回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2015-11-22 – 2015-11-24
  • [学会発表] Oncolytic virotherapy using genetically engineered mammalian reovirus2015

    • 著者名/発表者名
      Yuta Kanai, Takahiro Kawagishi, Yoshiharu Matsuura, Takeshi Kobayashi
    • 学会等名
      第21回日本遺伝子治療学会学術集会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2015-07-24 – 2015-07-26

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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