コウモリレオウイルス(NBV)の高病原性獲得機序を理解する上で、本年度は以下の成果が得られた。 S1遺伝子にコードされるFAST-p10、sigmaCについて、各種変異ウイルスを作製し、解析を行った。 セルアタッチメントに重要な構造タンパク質sigmaCの宿主受容体の同定に関する研究を行った。NBVに近縁の哺乳類レオウイルス sigma1はJAM-Aをレセプターとして利用する。そのため、NBV sigmaCがJAM-Aをレセプターとして利用する可能性について検討した。様々な手法を用いて解析を行った結果、JAM-AはsigmaCの機能的なレセプターでないことが明らかとなり、sigmaCは新規のレセプターを利用することが示唆された。コウモリならびにヒトから分離されたNBVの病原性比較解析を行った。その結果、コウモリ分離株は、ヒト分離株と比較して、A549細胞での感染性、マウスでの病原性が顕著に低下していた。これらの株間におけるS1遺伝子モノリアソータントウイルスを作製し、解析を行った結果、S1遺伝子が株間における病原性に深く関与していることが明らかとなった。 細胞融合活性を持つFAST-p10の機能について、解析を行った。FAST-p10欠損ウイルスは培養細胞での増殖が顕著に低下しており、さらに、様々なアミノ酸変異ウイルスを作製し、複製能と細胞融合能との関連性を調べた結果、FAST-p10の細胞融合活性がウイルス複製に重要であることが明らかとなった。FAST-p10欠損ウイルスをマウスに接種し、解析した結果、野生型と比較して、FAST-p10欠損ウイルスの病原性は顕著に低下していた。これらの結果は、FAST-p10はNBVの病原性因子の1つであることを示している。
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