研究課題
申請者はこれまで侵害受容チャネルであるTRPA1が種々の外因性の刺激性化学物質によりその活性が制御されていること、更にTRPA1チャネルはポリスルファイドなどの内因性物質によっても活性化されることを明らかにしてきた。本年度は腹痛や便秘、下痢などの症状を示す機能性胃腸障害である過敏性腸症候群の原因物質の一つとして着目されているメチルグリオキサル(糖化蛋白質と単糖類の分解によって生じる代謝産物)によるTRPA1チャネル活性に与える影響について検討した。腸クロム親和性細胞株であるRIN-14B細胞に対するメチルグリオキサールによるセロトニン放出と細胞内Ca濃度([Ca2+]i)に与える影響を調べた。セロトニン放出量はHPLC-ECDを用いて、[Ca2+]iは蛍光指示薬によるイメージング法により定量した。メチルグリオキサルは濃度依存性にRIN-14B細胞の[Ca2+]iを増加させ、5-HT分泌を引き起こした。Ca及び分泌反応は選択的TRPA1遮断薬及び細胞外Ca除去により抑制された。メチルグリオキサルの作用とTRPA1作動薬であるAllylisothiocyanateとの関係を調べたところ、両者の間に相互作用が認められた。以上の成績は、侵害受容性TRPA1チャネルが過敏性腸症候群の治療における有望なターゲットであるという知見を提供すると共に、RIN-14B細胞が腸クロム親和性細胞のモデル細胞として有用であることを示唆する。
2: おおむね順調に進展している
新たな内因性TRPA1刺激物質による活性制御機構と病態との関連性を明らかにすることが出来た。
急性及び亜急性疼痛状態における侵害受容体の関与と他のイオンチャネルとの相互作用を検討することにより、疼痛メカニズムの基礎的知見を得て、疼痛治療への応用へと研究を進めて行く予定である。
免疫沈降のための抗体購入にあてる
TRPA1チャネルと他の興奮性チャネルの物理的相互作用の有無について免疫沈降-タンパク質解析を行う。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Brain Res Bull
巻: 125 ページ: 181-186
10.1016/j.brainresbull.2016.07.005
Neuropharmacol
巻: 111 ページ: 130-141
10.1016/j.neuropharm.2016.08.039.
Cell Reports
巻: 17 ページ: 2004-2014
10.1016/j.celrep.2016.10.073.