研究課題/領域番号 |
26292157
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 和幸 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10223554)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 組織球性肉腫 / 変性性脊髄症 / 炎症性筋疾患 / ウェルシュコーギー / 犬 |
研究実績の概要 |
平成28年(2016年度)にウェルシュコーギー犬の髄膜由来の組織球性肉腫とフラット・コーテッドレトリバー犬の関節由来の組織球性肉腫よりぞれぞれCell lineを作成し、これらのCell lineの定性・比較を行った論文は平成29年(2017年)にVeterinary Pathology(米国)に公表された(On line掲載)。これに加え該当年度に新たに、犬の皮膚ラングハンス細胞性組織球症に由来する細胞の継代に成功し、現在Cell line化を進めている。犬の播種性組織球性肉腫由来のCell lineについては、すでに市販されているため、今年度の成果によりイヌの組織球増殖疾患の多様な病態に由来するCell lineがほぼ準備できたと考えている。来年度は最終年度にあたるため特に髄膜組織球性肉腫の細胞株の特性を分子レベルで検討する予定である。 ウェルシュコーギーの変性性脊髄症については、平成28年度に新たに3例の剖検例を加えることができた、該当年度には、ミトコンドリア特異的なオートファジーであるミトファジー関連分子について検証を進めている。また本疾患の末梢神経と筋傷害について主に筋病理の観点より検討を進めその成果が海外の学術雑誌に受理されている。 本犬種の特徴的な舌萎縮を特徴とする炎症性筋症については、この3年間、新規症例の追加がない(生検・剖検のいずれも)。このため検討範囲を炎症性筋症の犬の血清を取集し、本犬種の抗筋抗体と他犬種の抗筋抗体との相違について現在検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症性筋症に関する知見が当初予定より乏しいが、その他の2疾患については検討がほぼ予定とおり進行していると判断している。 組織球性腫瘍については、これまでの成果を公表できたほか、昨年度に新たにラングハンス細胞性組織球症のCell lineの樹立が可能な状況になり、より多角的に組織球性腫瘍の検索ができるようになった。 変性性脊髄症についてはこれまで脊髄等の中枢神経系の検討が主体であったが、末梢神経と筋変性について検討し、その結果の一部を海外の学術雑誌に投稿し受理された。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度にはラングハンス細胞性組織球症由来の培養細胞についてもCell line化して、すでに樹立したウェルシュコーギー犬の髄膜組織球性肉腫のCell lineとの分子生物的相違について検証する予定である。 変性性脊髄症についてはすでに判明しているSOD1の変異が必ずしも本症の発症の絶対条件ではないと考えており、これまでの研究で明らかにしたオートファジーに加え、ミトファジー関連の分子の変化について検証する予定である。 炎症性筋症については、本犬種の疾患で申請者が検出・定性した抗筋抗体と、他犬種の多発性筋炎で検出された抗筋抗体の比較検証を行い、ウェルシュコーギー犬で確認できた炎症性筋症の特徴を明確にする予定である。
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