研究実績の概要 |
平成29年度は、前年度より実施した犬のランゲルハンス細胞性腫瘍に由来するCell Lineを樹立できたので、この細胞の性状と本研究期間にすでに樹立したウェルシュコーギーの髄膜組織球性腫瘍由来のCell line、およびフラットコーテッドレトリーバーの関節組織球性腫瘍由来のCell lineと比較検証している。基本的に後者の2株では、E-Cadherinの発現がin vitroおよびin vivoのいずれでも認められないのに対し、ランゲルハンス細胞由来のcell lineではE-cadherinの発現が維持されているのが最大の特徴であった。ランゲルハンス細胞由来のCell lineについてはこれまで樹立された報告がなく、今後犬の組織球性腫瘍の発がんメカニズムや治療法の検証のための有用な研究ツールになると予想される。 また、ウェルシュコーギーの炎症性筋症については、新規症例の入手ができないため、本犬種の変性性脊髄症による神経原性筋疾患と筋原性筋疾患について、すでに保存されているホルマリン固定パラフィン包埋組織を利用して、これらの基本的な病変の相違を免疫組織化学的手法により描出する方法を検証した。このためslow-myosinおよび fast-myosinにより遅筋と速筋のモザイク構造の確認し、さらにNestin, Myogenin等の筋芽細胞のマーカーにより再生筋の評価をすることにより、パラフィン標本においても筋原性筋疾患と神経原性筋疾患を形態学的に分類することが可能になった。また、本研究によりウェルシュコーギーの変性性脊髄症の筋病変は、比較的典型的な神経原性筋萎縮の特徴を示すことから、SOD1の変異は、神経系組織の異常を誘発するものの、筋組織には影響しないものと予想された。
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