研究課題
B細胞性高悪性度多中心型リンパ腫症例(同一症例)において、化学療法感受性期および耐性期の腫瘍細胞サンプルを採材し、両サンプル間における化学療法剤感受性関連遺伝子群の発現量を網羅的に解析することにより、本疾患における化学療法感受性関連遺伝子の探索を行った。網羅的遺伝子発現解析の結果、化学療法剤感受性予測候補遺伝子として、耐性期特異的に発現低下を示す9種類の遺伝子(CD8A, MBP, C6, F3, CC2D2A, OPRK1, BICC1, GIF, ANXA5)が抽出された。これら遺伝子に関して、マイクロアレイ解析に供した4症例のそれぞれにおいて、化学療法感受性期と耐性期における発現量をリアルタイムPCRによる半定量によって比較した。その結果、9種類の候補遺伝子のうち、ANXA5(annexin A5)とC6(complement component 6)に関しては、リアルタイムPCRによる半定量解析においても、耐性期特異的に発現低下することが示された。これらB細胞性高悪性度多中心型リンパ腫症例のサンプルを用い、エクソンキャプチャー法によってエクソン領域のDNAを抽出した後、エマルジョンPCRで増幅したライブラリーを用いて次世代型シーケンサーによって全エクソン領域ののDNA塩基配列を決定した。得られたシークエンス情報をイヌゲノムにマップし、化学療法感受性期と耐性期の間における変異、欠損、挿入等の塩基配列の変化を抽出した。その結果、解析した4例中2例の耐性期ににおいてPPP1R36(protein phosphatase 1, regulatory subunit 36)遺伝子の826番目の塩基のC→T変異が認められた。さらに、これと同一の変異を有する症例が1例見いだされた。
2: おおむね順調に進展している
抗がん剤・分子標的薬に対する耐性機構の網羅的解析をマイクロアレイと次世代型シーケンサーを用いて実施し、薬剤耐性と関連する可能性のある候補分子を抽出できたことから、初年度としてはおおむね順調に研究を進めることができたものと判断している。
昨年度および今後の研究によって得られた候補遺伝子の発現量を解析する遺伝子発現パネルを作製し、臨床例の薬剤感受性予測における有用性を明らかにする。同様に、薬剤耐性獲得に伴って変異が認められる遺伝子(群)に関してもパネルを作製し、その薬剤感受性予測における有用性を明らかにしていく。別の角度からの研究として、薬剤耐性獲得におけるエピジェネティック発現制御の変化を解析する。昨年度の研究により、薬剤耐性獲得によりその発現量の変化が同定された遺伝子に関して、症例由来腫瘍細胞や腫瘍由来培養細胞株を用い、DNAメチル化およびヒストン修飾に関する解析を行う。エピジェネティック発現制御、遺伝子発現量、および薬剤耐性の3者に関して、それぞれの関連を解析し、薬剤耐性に関与するエピジェネティック制御機構を明らかにしていきたい。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)
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