研究課題
本研究は網羅的な分子生物学的解析を基に犬の悪性腫瘍における化学療法耐性機構を解明することを目的としている。昨年度までにリンパ腫罹患犬に由来する化学療法感受性期および耐性期の腫瘍細胞を用い網羅的な遺伝子発現プロファイルおよびゲノム配列の異常の解析を実施してきた。このうち遺伝子発現プロファイルに関しては、昨年度までに10例のリンパ腫罹患犬に関してcDNAマイクロアレイを用いて解析した結果から抽出された新規化学療法耐性因子候補となった遺伝子に関して、本年度は新たに40例のリンパ腫罹患犬から採取した腫瘍細胞を用いてその発現量を化学療法感受性群と耐性群の間で比較した。その結果、化学療法耐性期においてはASNS、CCR3は有意に発現量が上昇し、FCER1A、CALCA、EDNRB、SASH1は有意に発現量が低下していることが明らかとなった。さらに、これら6遺伝子の発現量データを基に化学療法耐性判別モデルを統計学的に構築したところ、この40症例に関して化学療法耐性を高精度(感度: 82.4%、特異度: 95.7%)に判別できることが明らかとなった。これら抽出された遺伝子は化学療法耐性因子として新たに見出されたものでありその意義は大きいものと考えられ、また構築された化学療法耐性判別モデルに関してもその臨床的有用性は非常に高い可能性が示唆された。またゲノム配列の異常に関して、本年度は4例のリンパ腫罹患犬において化学療法感受性期、耐性期および生殖細胞系列のゲノム配列を次世代シーケンシングによるエクソーム解析によって比較・解析することで化学療法耐性に関与するゲノム配列異常の抽出を行った。その結果化学療法耐性期に特異的なゲノム配列異常として、DLA-64、ADCY1、TCHH、PRDM5、SIMC1などの遺伝子における変異が抽出され、これら変異の化学療法耐性への関与の可能性が示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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