研究課題
今年度は国内のミニチュア・ダックスフンド(MD)特有の疾患である炎症性結直腸ポリープ(ICRP)の病理発生メカニズム、特に病原体関連分子パターンに対する免疫応答の変化とパターン認識受容体(Pattern recognition receptors; PRR)の遺伝子変異の有無の検出を中心に研究を行った。まずICRP症例犬のポリープ病変部および非病変部結腸、ならびに健常な実験ビーグル犬の結腸の内視鏡生検サンプルを使用し、PRRの発現異常を調べたところ、ICRP症例犬のポリープ病変部におけるNOD2を含むさまざまなPRRの遺伝子発現量の有意な上昇が観察された。次に末梢血由来単球を用いてPRRの機能を評価したところ、IL-1βの遺伝子発現レベルはNOD2のリガンド刺激時にICRP症例犬でより高値となり、IL-1βの蛋白産生量はNOD2、TLR1/2、TLR2およびTLR2/6のリガンド刺激時にICRP症例犬で亢進していることが明らかとなった。このことより、ICRP症例犬ではNOD2、TLR1/2、TLR2およびTLR2/6の反応性が亢進していることが示唆された。そこでNOD2の遺伝的変異の有無を調査したところ、ICRP症例犬では合計で13ヶ所の一塩基多型(SNP)が同定された。ICRP症例犬に特異的なSNPは認められなかったが、NOD2のエクソン3に存在する4つのSNP(A1532G、T1573C、C1688GおよびG1880A)は実験ビーグル犬よりもICRP症例犬および対照MDで多く認められる傾向にあった。また一連の研究の前段階において、MDのICRPの病変の発生角度の分布を調べたところ、結直腸の背側面よりも腹側面により好発するという興味深い治験も同時に得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに、ミニチュア・ダックスフンドの炎症性結直腸ポリープの自然免疫異常に関する研究が進んでいるのが主な理由である。また上記の成果以外にも、腸内細菌叢の変化に関しても研究成果がでつつあること、柴犬の慢性腸症についても、リンパ球クローナリティ解析で興味深い治験が得られつつあることなども理由である。研究の目的で記載していたジアミンオキシダーゼ(DAO)活性の変化と腸粘膜透過性の変化に関しては、データが安定せず、研究があまり進んでいいないが、それ以外に計画していた4項目については概ね順調であると言える。
今年度はまだ十分な成果が得られなかった、自然免疫の中でも、腸内環境すなわち腸内細菌叢の変化について、研究を邁進する予定である。同時に柴犬の慢性腸症についても、特徴である十二指腸のリンパ球について、そのクローナリティの状態や、制御性T細胞の変化などについて、現在研究を行っているので、成果がだせるようにしたいと考えている。予算的な問題および当初の研究計画に記載していないという問題があるが、ミニチュア・ダックスフンドの炎症性結直腸ポリープについては、症例犬と非症例犬および海外のミニチュア・ダックスフンドとで、マイクロアレイ解析ができることが望ましいと考えている。
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