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2015 年度 実績報告書

国内の犬種特異的腸炎を用いた腸内環境-粘膜応答クロストーク異常の解析と治療法探索

研究課題

研究課題/領域番号 26292159
研究機関東京大学

研究代表者

大野 耕一  東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (90294660)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードミニチュアダックスフンド / 炎症性結直腸ポリープ / 慢性腸症 / 犬 / 蛋白漏出性腸症 / パターン認識受容体
研究実績の概要

日本国内で多発するミニチュアダックスフンド(MD)の炎症性結直腸ポリープ(ICRP)は犬の炎症性腸疾患(IBD)の特殊な亜型と考えられ、品種特異性や病態からもその病因解明が重要と考えられる。昨年までの研究に引き続き、この犬種特有の自然免疫に異常を考え、パターン認識受容体(PRR)の異常を検討した。26頭のMDのICRPを用いて、末梢血単核球のPRRリガンドに対する反応性を検討したところ、ICRPではNOD2リガンドや複数のtoll様受容体 (TLR) 刺激に対する反応性が有意に増加いていることが明らかとなった。また一塩基多型(SNP)について調査したところ、MDのICRPには、4つのSNP(A1532G, T1573C, C1688G, and G1880A in the NOD2 gene) が関与していることを解明した。病理学的な検討では、cytokeratin 20 (CK20)や、cyclooxygenase 2、fibroblast growth factor 2の発現が関与しているこが明らかになった。
またICRP以外の犬の慢性腸症や蛋白漏出性腸症についても、リンパ球抗原受容体遺伝子の再構成病理学的および臨床的関連性について検討を行った。その結果犬の慢性腸症では腫瘍でなくともリンパ球のクローナリティが陽性になりやすいこと、その陽性率は組織学的重症度や予後と関連することが明らかとなった。さらに犬の慢性腸症における制御性T細胞(Treg)について検討したところ、IBDの犬ではTregの細胞数およびIL-10の発現が減少しており、このことが免疫寛容の破綻などに関連していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ミニチュアダックスフンドの炎症性結直腸ポリープの研究に関しては、当初の予定通りあるいはそれ以上に研究が進んでおり、あとは次年度に腸内細菌叢の検討をまとめれば、計画通りといえる。
一方で他の犬種とくに柴犬の病因解明については、まだ十分進んでいるとはいい難く、柴犬を含めて犬の慢性腸症の検討、とくに抗原受容体遺伝子の再構成や制御性T細胞の関与に関する研究にとどまっており、犬種特異性という点について次年度に行うこととなったたため、「概ね」という判断が妥当を思われる。

今後の研究の推進方策

今年度は昨年度の研究に引き続き、ミニチュアダックスフンドの炎症性結直腸ポリープ(ICRP)と診断された症例の腸内細菌叢について、健常なミニチュア・ダックスフンドと症例犬を用いて解析する。具体的には各個体の糞便サンプルからDNAを抽出し、16SrRNA遺伝子について次世代シーケンサーによる解析を行なう。得られたデータについて、腸内細菌叢解析ソフトウェア(QIIME)によりICRP罹患犬および健常犬の腸内細菌叢について比較解析し、疾患と腸内細菌叢の構成との関連性を検討する。さらに病変部および健常部の内視鏡生検サンプルからDNAを抽出し、同様の解析を行なうことで病変形成に関連する腸内細菌またはその構成を検討する。
また腸内環境要因としてのプロテアーゼ/プロテアーゼ活性化受容体(PAR)2の変動とプロテアーゼ阻害薬の治療効果についても、臨床的検討を進めていく。これまでの実験により得られた知見を応用し、プロテアーゼインヒビターを用いたイヌ慢性腸炎の新規治療法の確立を目指す。具体的には、医学領域において慢性膵炎や逆流性食道炎で用いられているメシル酸カモスタットという経口プロテアーゼインヒビターをミニチュア・ダックスフンドのICRPや柴犬の難治性CE症例に投与し、治療効果を検証する。症状スコアとともに、投与開始前および投与終了時に糞便を採取し、糞便中のセリンプロテアーゼ活性を測定する。また安全性の評価として、投与開始前および投与終了時(投与開始2~3週間後)に採血を行い、CBCおよび血液生化学検査(GPT、ALP、BUN、CRE、ALB、Na、K、Cl、CRP)を実施し、安全性を評価する。また、有害事象の評価として、臨床症状(元気・食欲、呼吸状態、嘔吐・下痢、神経症状、アレルギー症状、ショック症状)について重症度、発現日時、転帰、本薬剤との因果関係を記録する。

次年度使用額が生じた理由

計画していた研究のうち、腸内細菌叢の次世代シーケンサーを用いた検討が遅れたため、次年度にその予定していた金額を繰り越しとした。

次年度使用額の使用計画

すでにサンプルを送付しているので、数カ月以内にはデータ解析を行うとともに、請求もくるものを思われる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 3件)

  • [雑誌論文] Efficacy of leflunomide for treatment of refractory inflammatory colorectal polyps in 15 Miniature Dachshunds.2016

    • 著者名/発表者名
      Fukushima K, Eguchi N, Ohno K, Kanemoto H, Takahashi M, Igarashi H, Ohmi A, Nakashima K, Tsujimoto H.
    • 雑誌名

      J Vet Med Sci.

      巻: 78 ページ: 265-269

    • DOI

      10.1292/jvms.15-0129.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Pathologic Features of Colorectal Inflammatory Polyps in Miniature Dachshunds.2016

    • 著者名/発表者名
      Uchida E, Chambers JK, Nakashima K, Saito T, Ohno K, et al.
    • 雑誌名

      Vet Pathol.

      巻: E-pub ページ: E-pub

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Changes in Foxp3-Positive Regulatory T Cell Number in the Intestine of Dogs With Idiopathic2016

    • 著者名/発表者名
      Maeda S, Ohno K, et al.
    • 雑誌名

      Vet Pathol.

      巻: 53 ページ: 102-112

    • DOI

      10.1177/0300985815591081.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Prognostic factors in dogs with protein-losing enteropathy.2015

    • 著者名/発表者名
      Nakashima K, Hiyoshi S, Ohno K, et al.
    • 雑誌名

      Vet J.

      巻: 205 ページ: 28-32

    • DOI

      10.1016/j.tvjl.2015.05.001.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Association between lymphocyte antigen receptor gene rearrangements and histopathological evaluation in canine chronic2015

    • 著者名/発表者名
      Hiyoshi S, Ohno K, et al.
    • 雑誌名

      Vet Immunol Immunopathol.

      巻: 165 ページ: 138-144

    • DOI

      10.1016/j.vetimm.2015.03.009.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Polymorphisms of nucleotide-binding oligomerization domain 2 (NOD2) gene in miniature dachshunds with inflammatory colorectal polyps.2015

    • 著者名/発表者名
      Igarashi H, Ohno K, et al.
    • 雑誌名

      Vet Immunol Immunopathol.

      巻: 164 ページ: 160-169

    • DOI

      10.1016/j.vetimm.2015.02.005.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

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公開日: 2017-01-06  

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