研究課題/領域番号 |
26292165
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
村上 昇 宮崎大学, 農学部, 教授 (80150192)
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研究分担者 |
保田 昌宏 宮崎大学, 農学部, 准教授 (10336290)
永延 清和 宮崎大学, 農学部, 教授 (40264353)
中原 桂子 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90315359)
西野 光一郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90508144)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 摂食調節中枢 / グレリン / ニューロメジンU / ニューロメジンS |
研究実績の概要 |
平成26年度は、摂食中枢および摂食調節中枢の神経活動の特性について検討した。 摂食中枢の室傍核、腹内側核および外側視床下部、あるいは摂食調節中枢の弓状核が、グレリンやレプチン、あるいはNMU,NMSに対して、どのような神経活動を行うかについては全く不明である。神経の電気活動を測定することは、神経の活動が抑制的であるのかあるいは促進的であるのかを知る上で極めて重要である。神経活動を測定する方法として、生体での神経活動を知るin vivo法として多電極装着ラットでの神経活動記録が有効であり、任意の神経核に電極を装着すれば、その神経核の活動状態を無麻酔下で記録できる。また、in vitro法として脳スライスから電位を記録する方法がある。そこで、この両者を用いてニューロメジンU、Sとグレリンの作用を検討した。まず、弓状核の組織スライスにおいて、ニューロメジンUおよびSは発火頻度の減少を招いた。この減少した部位はNPYやAGRPの神経細胞が多く分布する第3脳室背側上部であり、基底部のPOMC細胞領域では発火頻度の減少は認められなかった。一方、グレリンはニューロメジンUと異なり、NPYやAGRP細胞領域の発火頻度を増加させた。視交叉上核においてはグレリンに対する変化は認められなかったが、ニューロメジンUとSでは発火頻度に有意な増加が認められた。この時、主にVIP細胞領域よりもAVP領域、つまり体内時計の発信部の神経細胞が多く反応した。ニューロメジン類は主に弓状核のNPYやAGRP神経細胞に作用して発火頻度を減少させたことから、これらの摂食促進系細胞に作用して、その抑制的な効果を発揮すること、逆にグレリンはそれらの細胞で促進的作用を示す事が推測される。また視交叉上核に対して、ニューロメジンUおよびSともに、光同調機構ではなく時計の発信機構に対して、何らかの調節を行っているものと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、(1)摂食の中枢性液性調節機序について: グレリンやNMU,NMSがどのように視床下部の摂食関連遺伝子の転写に作用して摂食を調節しているのか、またそれらの下流にはどのような因子が関与しているのか、グレリン欠損マウス、レプチン欠損マウス、NMU, NMS欠損マウス(すでに講座で有している)を使用して解明する。(2)摂食中枢および摂食調節中枢の神経活動の特性について::摂食直前や摂食中にどこの神経核がどのように発火するのかを調べ、またグレリンやレプチンを脳室内投与した時にどのような発火が見られるかを記録する。一方、in vitroでは多電極ディッシュで脳スライスを培養し、88個の電極に接した神経細胞の活動電位を記録し、摂食中枢や調節中枢の電気的特性を解明する、の2点が主な研究計画であった。実績報告書には2点目について記した様に、十分な成果が得られた。また第1についてもNMU, NMS欠損マウスでも成果は得られた。
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今後の研究の推進方策 |
以下の2点を計画している。 (イ)末梢グレリンやレプチンの中枢への作用機序:これまでの研究で、グレリン受容体は迷走神経節で合成され、これが軸索輸送で末梢に分布する神経終末に運ばれ、そこで、胃から分泌されたグレリンと結合することが判明した。これによってその情報は求心性に中枢へ伝達され、摂食が誘起される。迷走神経節にはCCK、NMSやレプチン受容体も合成されることが予備実験で確認された。そこで、これらの受容体の合成や輸送がどのように調節されているのかを、迷走神経節の種々のホルモン受容体mRNAを定量的に解析することで調べる。 (ロ)胃からのグレリン分泌機序と脂肪からのレプチン分泌機序について:これまでグレリンの分泌調節については殆ど明らかにされておらず、我々が先にソマトスタチンによるグレリン分泌抑制を示したに過ぎない。グレリン分泌を促進する物質が見つかれば、グレリンを投与せずに、摂食を亢進できる可能性は高い。そこで、P10チューブを用いた胃静脈カニュレーション法を行い、3時間持続的に血中グレリンをモニターする方法を確立した。これによる予備実験で、グルカゴンを投与するとグレリンの一過的(旺盛な)分泌が起ることが判明した。そこで、このシステムを使ってグレリンの分泌に影響する物質のスクリーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物飼育飼料が年度を超えて必要であったため
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次年度使用額の使用計画 |
飼料購入代金の一部として使用予定である。
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