研究課題/領域番号 |
26292165
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
村上 昇 宮崎大学, 農学部, 教授 (80150192)
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研究分担者 |
保田 昌宏 宮崎大学, 農学部, 教授 (10336290)
永延 清和 宮崎大学, 農学部, 教授 (40264353)
中原 桂子 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90315359)
西野 光一郎 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90508144)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 摂食中枢 / 走行中枢 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、実験1として高脂肪食誘発性肥満マウスでのレプチン慢性投与の効果を、実験2として高脂肪食給餌マウスにおけるレプチン抵抗性獲得時期を、さらに実験3として高脂肪食が走行運動へ与える影響を調べた。 実験1ではC57BL/6Jマウスを4群に分け、2週間、60%高脂肪食あるいは通常食を、また、それぞれにレプチンあるいは生理食塩水の慢性投与を行った。その結果、高脂肪食給餌2週間ですでにマウスは通常より有意に高い血中レプチン値や体脂肪の増加を示した。この間、レプチン慢性投与による体重、体脂肪の有意な減少やエネルギー消費の亢進は認められなかった。実験2では、マウスへの高脂肪食給餌期間を2,4,6,8あるいは10週間に設定し、その後に通常食へ戻した。その結果、給餌を高脂肪食給餌から通常食へ移行すると、直ちに体重、体脂肪率、レプチン濃度は有意に減少し、正常に近い値に回復した。実験3では、マウスを輪回し付きケージにて飼育し、通常食給餌群と高脂肪食給餌群に分け、回転数を計測した。その結果、高脂肪食給餌後直ちに、走行量の有意な減少が認められ、その後通常食へ戻しても走行量の回復は認められなかった。また、レプチン値、インスリン値、精巣周囲脂肪量において、高脂肪食給餌群が顕著に高い値を示したが、走行を行った群では大幅な肥満の改善が起こった。 以上の結果より、高脂肪給餌によるレプチン上昇と体脂肪の蓄積は高脂肪食給餌での高カロリー摂取が原因では無く、高脂肪食の中に、直接レプチンの上昇を引き起こす因子(物質)が含まれている可能性、と、高脂肪食の中に、走行運動中枢を抑制する因子(物質)があり、その中枢の抑制がエネルギーのインバランス(例えば消費の抑制)を起こしている可能性が推測された。本研究より、総コレステロールとHDLコレステロールがその原因物質である可能性が示された。 。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の結果を2報の国際雑誌に投稿し、受理されて公開された。また、今回の結果から、走行運動と摂食の共役機構が確実に証明され、摂取した脂肪が走行運動調節に重要な要因となることが判明したため。
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今後の研究の推進方策 |
輪廻しケージで動物を飼育し、走行運動が24時間自由にできる状態から3時間のみ可能な状態に移すと毎日の摂食量は有意に増加し、逆の条件では有意に減少する。また食事を高カロリー食給餌から低カロリー食給餌に移すと走行運動量は有意に増加し、逆では有意に減少することを我々は見いだした。すなわち摂食と走行は相反的共役関係にある。またこの事実は摂食中枢と同様な走行運動中枢の存在を示唆している。そこで、本研究では、走行運動の中枢を、様々な部位の電気破壊で探索する。また、放射線同位元素標識2-デオキシグルコースの取り込み部位で、輪回し走行運動中枢部位を調べる。これまでに腹内側核近辺に走行運動に関係する部位が存在するという予備的結果を得ている。次に、走行運動の開始前後で、ラットの脳でcFos(神経活性化の指標)を発現する部位を同定し、この部位と破壊実験の結果を比較する。これによって走行運動の中枢を最終的に確定する。さらに、摂食との共役関係については、輪回し走行前、走行時、走行後で摂食関連中枢の弓状核、腹内側核、室傍核および確定した走行運動中枢の部位をパンチアウトで採取し、ジーンチップおよびマイクロアレイで遺伝子発現を解析する。走行および摂食に関連する遺伝子を検索し、それらがどのように共役して変化しているかを検討する。最後に、肥満マウスにおいて肥満発症前に輪回し走行運動を取得させ、運動を肥満との関連を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にわたって、ラットを飼養するための餌代として、繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
CRF-1の代金として使用する。
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