研究課題/領域番号 |
26292166
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
加藤 幸雄 明治大学, 農学部, 教授 (30114177)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 遺伝子 / 発現制御 / 内分泌学 / 生殖 / 細胞・組織 / 幹細胞 / 分化 / 組織形成 |
研究実績の概要 |
表記課題を達成するための平成28年度の期間で、下記のような実験を進めた。 転写因子PROP1は下垂体組織に特異的であり、この組織の発生と成熟のキーとなる因子である。この因子の陽性細胞には、幹細胞を特徴づけるSOX2が常に共存する。そして、胎仔期下垂体の細胞は一度はPROP1の影響を受けており、この因子の発現制御機序の解明は重要である。 1.PROP1遺伝子の制御因子20種類を同定した論文に引き続き、PROP1遺伝子のエピジェネティクス制御を調べるために、ラットPROP1遺伝子のメチル化解析を行った。その結果、非発現組織と比べて下垂体においてメチル化の差異があることが見つかった。転写開始点の遠位、近位、第1イントロンにその差異が確認された。 これまでの転写因子制御因子による制御の研究成果を交えて考察し、論文発表を行った。 2.外胚葉上皮系プラコードを起源とする下垂体組織には、その発生分化の過程で、由来の異なる細胞群が侵入する。その代表例が血管形成に関わる細胞であり、また、第4の胚葉とも言われる神経堤細胞である。本年、下垂体非ホルモン産生細胞のマーカーとして使われているS100β遺伝子のプロモーターにより恒常的に蛍光タンパク質を発現するS100β-トランスジェニックラットを用いて、胎仔期から下垂体に侵入し各種の血管構成細胞のマーカーに陽性な細胞種に分化すること、また、間葉細胞や神経堤細胞のマーカーに陽性の別種の細胞が同時に進入する事を発見し、論文発表した。 3.下垂体のホルモン産生細胞の供給機構を明らかにするため、幹・前駆細胞塊の単離に成功した。SOX2/ PROP1陽性である細胞塊を用いて、限定的であるがホルモン産生細胞への分化を確認しており、この途中までの成果を幹細胞研究の国際誌に発表する事ができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.PROP1遺伝子のエピジェネティックな制御の解明をまとめる事ができた。 2.外胚葉上皮由来の下垂体組織に、神経堤を含む他の胚葉を起源とする細胞が侵入して下垂体を形成することを確認し、論文発表できた。 3.成巧した幹・前駆細胞塊の単離を論文発表し、さらにその細胞塊に特性評価の実験に移行ができたことで、ホルモン細胞供給機構の解明に向けて大きく前進した。 4.上記の細胞塊で発現している遺伝子の網羅的解析RNAseqの解析データの集積ができつつあり、興味ある遺伝子の特定に近づいている。 以上のことから、研究は順調に展開していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策等 1.下垂体幹・前駆細胞の分化誘導実験とその際の分子機構の解明に取り組む。 2.下垂体幹・前駆細胞塊で発現している特徴ある遺伝子を絞り込みと、それら遺伝子の機能を解明する。 3.PROP1の初期の制御としてのレチノイン酸の役割を解明する。 4.神経堤細胞の系譜解析 (lineage tracing)を行い、起源を異にする下垂体に住みつく細胞群の役割を解き明かす。
|
次年度使用額が生じた理由 |
高額の受託分析を予定していたが、公的な支援事業に採択されて予算の支出が抑えられたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
新たな実験計画を策定して全額を使用する予定である。
|