研究課題/領域番号 |
26292170
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
枝重 圭祐 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (30175228)
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研究分担者 |
高橋 昌志 北海道大学, 農学研究院, 教授 (10343964)
越本 知大 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (70295210)
松川 和嗣 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (00532160)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ブタ胚 / ウシ胚 / 低温傷害 / 高温傷害 |
研究実績の概要 |
ブタの精子、卵子および胚は低温感受性が高く、15℃に短時間さらされただけで死滅してしまう。多くの細胞で温度を感受する温度センサーチャンネルが発現していることが知られている。今年度は、ブタ卵子において低温条件化で実際にTRPチャンネルが活性化し、細胞内カルシウム濃度が高まるかどうかをしらべた。ブタの成熟途上卵子を15℃で処理すると、まず約2分後に細胞内カルシウム濃度が上昇し、それから約5分後にさらに濃度が上昇する二相性の細胞内カルシウム上昇を示すことがわかった。15℃を感知するTRPA1の特異的阻害剤であるAP-18で前処理すると、最初のカルシウム濃度の上昇が抑制された。また、TRPA1のdouble stranded RNAを注入してTRPA1の発現を抑制した場合も同様に最初のカルシウム濃度の上昇が抑制された。いずれの卵子も低温処理後の生存性が向上した。したがって、低温処理による最初の細胞内カルシウム濃度の上昇はTRPA1の活性化による細胞内へのカルシウム流入によるもので、ブタ卵子の低温傷害の引き金になっていると考えられた。また、ブタ精子における低温傷害に低温感受性TRPチャンネルが関与しているかどうかを明らかにするために、ブタ精子をTRPチャンネルの非特異的阻害剤であるルテニウムレッドで前処理し、30℃から15℃に急速に冷却して生存性をしらべた。ルテニウムレッド処理の有無にかかわらず、生存性はあまり低下せず、ブタ精子の低温傷害にTRPA1は関与していないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ブタの卵子と精子については比較的順調に研究が進んでいる。しかしながら、良好な発生能を持つブタの体外受精胚が得られない場合が多く、ブタ胚の研究は予定通り進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
実験1.ブタの卵子/胚の凍結保存後の生存性に対する低温感受性TRPチャンネル(TRPA1とTRPM8)の情報伝達阻害剤や特異的阻害剤の効果をしらべ、卵子/胚の耐凍性向上をこころみる。なお、ブタ胚を用いた実験については、良好な発生能を持つ体外受精胚を得るために、一昨年協力いただいた外部研究者と共同で研究を行う予定である。 実験2.ブタ精子の低温傷害に関しては、かなり高い温度域を感知する温度センサーチャンネルが関与していることが示唆されたので、37℃から30℃に急激に冷却した場合の低温傷害に着目し、30~37℃付近を感知するTRPチャンネル(TRPV2, TRPV4, TRPM2)の特異的阻害剤の低温傷害軽減効果をしらべる。 実験3.引き続き、ウシ初期胚の高温傷害に関与する温度感受性TRPチャンネルの探索をすすめる。
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