研究課題
ブタの精子、卵子および胚は低温感受性が高く、15℃に短時間さらされただけで死滅してしまう。多くの細胞では温度を感受する温度センサーチャンネルが発現していることが知られている。今年度は、ブタ卵子における低温感受性TRPチャンネルの活性化と低温傷害の関係をしらべた。様々な成熟段階の卵子を15℃で低温処理すると、17℃以下を感知するカルシウムチャンネルであるTRPA1のmRNAが発現している未成熟卵、成熟途上卵、成熟卵のいずれも処理開始約2分後から細胞内カルシウム濃度が上昇し、培養後の卵子の生存性は大きく低下した。TRPA1の特異的阻害剤であるAP-18で前処理すると、いずれの成熟段階の卵子においても15℃での低温処理による細胞内カルシウムの上昇が抑制され、生存性の低下も抑制された。また、TRPA1のdsRNAを注入してその発現を抑制した成熟途上卵子と成熟卵子でも、15℃処理による細胞内カルシウム上昇と生存性の低下のいずれも抑制された。したがって、ブタ卵子を15℃以下で低温処理すると、いずれの成熟段階でもTRPA1の活性化による細胞内カルシウム上昇を介して傷害を受けると考えられた。一方、25~26℃以下を感知するTRPM8のmRNAは成熟卵子のみで発現しているが、成熟卵子を24℃で低温処理すると、細胞内カルシウムが上がる傾向がみられた。しかしながら、24時間培養後の生存性はほとんど低下しなかった。TRPM8の阻害剤であるAMTBで成熟卵子を前処理しても24℃で低温処理した後の生存性に影響はなかった。したがって、TRPM8はブタ卵子での発現量が比較的少なく、低温傷害にはほとんど関与していないと考えられた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件) 図書 (2件)
The Journal of Reproduction and Developmant
巻: 262 ページ: 317-321
10.1262/jrd.2016-048
Mammalian Biology
巻: 81 ページ: 46-52
10.1016/j.mambio.2014.10.007