研究課題/領域番号 |
26292171
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
金子 浩之 独立行政法人農業生物資源研究所, 動物発生分化研究ユニット, 上級研究員 (60343993)
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研究分担者 |
菊地 和弘 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 動物発生分化研究ユニット, 上級研究員 (20360456)
大西 彰 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (30414890)
中井 美智子 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 医用モデルブタ研究開発ユニット, 任期付研究員 (30442825)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血友病モデルブタ / 精祖細胞 / 超低温保存 / 異種間移植 / 系統樹立 |
研究実績の概要 |
血友病の治療法開発には、血液凝固系がヒトに近似したブタの血友病モデルが重要な役割を果たす。当グループは、遺伝子組換えとクローン技術によって、血液凝固第Ⅷ因子遺伝子をノックアウトした血友病モデルブタを開発した。しかし、初代クローンブタが幼若期に雌雄ともに血友病で死亡するために、成体を用いる従来の繁殖技術では後代を得ることができずモデル動物として供給できない。そこで本課題では、血友病モデルブタの初代クローン胎子から精巣を採取し、超低温保存した後、ヌードマウスに移植しマウス体内でブタ精子を生産させ、この精子を用いて後代を作出することを目的とした。今年度の実績は以下のとおりである。 初代クローン胎子の作製: X染色体上にある第Ⅷ因子遺伝子を標的とするノックアウトベクターを雄胎子由来の線維芽細胞へ導入し、その細胞核を除核した体外成熟卵に注入した。電気パルスによる活性化刺激の後、発生した核移植胚を9頭のレシピエントブタの卵管に1頭あたり200から300個移植した。その結果、4頭の胎子の生産に成功し、胎齢70日前後で精巣を採取し超低温保存に供した。また耳片からDNAを抽出しPCRを行った結果、4頭中3頭にノックアウトアリルの存在が確認された。さらに肝臓よりmRNAを抽出し第Ⅷ因子のmRNAを定量した結果、ノックアウトアリルの検出された3頭には第Ⅷ因子のmRNAは検出されなかった。 ブタ胎子精巣の超低温保存と異種間移植: 胎子精巣を約1mm角の小片に細切した後、耐凍剤としてエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびトレハロースを用いたガラス化冷却を行った後、液体窒素内で保存した。上記の解析で第Ⅷ因子遺伝子がノックアウトされていると判定された胎子の精巣小片を加温し、15個ずつ去勢したヌードマウスの背部皮下に移植した。3ヶ月経過した時点で移植小片は体表から確認できるまでに成長した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26では、血友病モデルブタ胎子の作製、胎子精巣のガラス化冷却による超低温保存、および保存した精巣小片のマウスへの移植を実施した。移植精巣が精子を生産可能になるまでには、マウス体内での留置期間が300日以上を要することから、まだ精子回収には到達していないが、体表からも移植小片の発育(増大)が確認された。以上から、本課題は概ね当初の研究計画を達成したものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降、マウス体内で生産された血友病モデルブタの精子を成熟卵に顕微注入し受精卵を作製し、レシピエントブタに移植し産子の生産を試みる。雌子ブタが生まれた場合、子ブタは精子由来の第Ⅷ因子遺伝子がノックアウトされたX染色体(X-と表記)と卵由来の正常なX染色体(X)を持ち、生存可能であると予想される(保因雌の生産)。この雌(X-/X)に野生型雄(X/Y)を交配すれば、子は保因雌が1/4、血友病モデルブタ(X-/Y)が1/4 の確率で誕生することが期待できる。 顕微授精による産子生産の成功率(10~20%)を考慮すれば、今後さらに血友病モデルブタの精巣移植例を追加する必要がある。H26年度に得られた血友病モデルブタ胎子の体細胞(第Ⅷ因子が既にノックアウトされ胎子に発生する能力を有している)を用いてクローン胎子を作製し、研究の効率化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度は、血友病モデルブタ胎子の作製には成功したが、3頭であったため、精巣移植に必要なヌードマウスの購入数が予定より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度では、マウスに移植した血友病モデルブタ精巣から精子を回収し、この精子から発生工学手法を用いて次世代を生産する。併せて、血友病モデルブタ胎子の作製を追加し、ヌードマウスへの精巣移植を継続する。
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