研究実績の概要 |
miRNAがカイコの性決定遺伝子の発現パターンや発現量の制御に関与するかどうかを検証するため, miRNAによる翻訳抑制に必須の因子であるAgo1のノックダウンを行い, miRNA経路を遮断した場合に性決定遺伝子の発現量に変化がみられるか調査した. その結果, Bmdsxの発現量が雌雄どちらにおいても著しく減少することが判明したことから, miRNAがBmdsxの発現量の維持に関わることが強く示唆された. そこで, Bmdsxの発現量の制御に関わるmiRNAを同定するため, 性決定時期に発現するmiRNAを網羅的に同定した後, 発現量に性差のあるmiRNAを探索した. その結果, 雌で高い発現を示すmiRNAを282個, 雄で高い発現を示すmiRNAを330個同定することができた. それぞれ上位50個のmiRNAについてRT-PCR及びqRT-PCRを行い, 胚発生時期における発現パターンと発現量の推移について詳細に調べた. その結果, miR-2733i-3pのみが性決定時期の雄において最も発現量が高いことが判明した (図3B). そこでmiR-2733i-3pをノックダウンした卵における性決定遺伝子の発現量を調べたところ、Bmdsxの発現量は雌雄どちらにおいても減少することが判明した. miR-2733i-3pの標的遺伝子を推定するため, in silico解析を行った結果, 1851遺伝子が標的として予測された. これらを予測信頼度の高い順に並べたところ, 転写因子としてはBmdsxが最高位であることが判明した.レポーターアッセイによるmiR-2733i-3p標的部位のバリデーションを行った結果、miR-2733i-3pはBmdsx mRNAの3’UTRの509~531ntに存在する標的配列を介して翻訳抑制を引き起こすことが判明した。
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