研究課題
平成27度までの研究成果により、我々は鱗翅目昆虫特有のmicroRNAであるmiR2733ファミリーに属する3つのmiRNAが、カイコの性決定時期である産下後32時間の卵において最も高い発現を示すことを明らかにした。また、miR2733-i-3pは性分化のマスターレギュレーターであるBmdsxの3'UTRに存在する標的配列に結合し、その翻訳を阻害することがレポーターアッセイによるバリデーション実験によって支持された。以上の点を踏まえ、平成28年度はmiR2733が実際に内在性のBmDSXのタンパク質翻訳量を下げるか否か、という点について確認することにした。このためにリコンビナントBmDSXタンパク質を精製し、これを抗原として用いた抗BmDSX抗体を作製した。この抗体を用いてWestern blottingの結果、胚子期におけるBmDSXタンパク質の発現量は極めて低いことがわかった。このため、胚子期におけるmiR2733の発現が内在性のBmDSXの発現量を下げるか否かという点について明らかにすることはできなかった。一方、平成27度までの研究成果により、胚子期におけるmiR2733の発現を抑制すると、BmdsxのmRNA量が減少することを我々は突き止めている。そこで平成28年度は、胚子期におけるmiR2733のノックダウンが性分化に及ぼす影響について調べることにした。カイコの受精卵にanti-miR2733 LNAを注射したところ、孵化個体が得られず胚致死することが判明した。そこで胚子期における性分化に及ぼす影響に焦点を絞った解析を行うことにした。胚子期における性的二型については知見がなかったため、胚子の切片標本をステージ毎に作製し、雌雄で比較した結果、催青II期(孵化1日前)のステージにおいて生殖巣の大きさや生殖細胞の数に有意な雌雄差を認めることができた。anti-miR2733 LNAを注射した胚子はこのステージまで発生する前に致死に至ったため、miR2733が性分化に及ぼす影響について明らかにすることはできなかった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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