研究課題/領域番号 |
26292173
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
池田 素子 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20262892)
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研究分担者 |
永峰 俊弘 国立研究開発法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (90237553)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗ウイルス応答 / 核多角体病ウイルス / 昆虫培養細胞 / リボソームRNA分解 / 全タンパク質合成停止 / RNA-seq解析 |
研究実績の概要 |
これまでに,NPV感染によって全タンパク質合成停止となるカイコ細胞で,リボソームRNA(rRNA)が分解減少することを明らかにし,全タンパク質合成停止の原因であることを示唆した.さらに,NPVのp143遺伝子によりrRNA分解が誘導されることを明らかにした. rRNA分解を誘導するためのシグナル伝達因子の探索と同定を目的として,Autographa californica MNPV(AcMNPV)あるいはカイコNPV感染細胞と偽感染細胞から経時的にRNAを回収し,次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析をおこなった.まず,感染時間に伴う遺伝子発現変動を比較した結果,AcMNPV感染細胞において,カイコNPV感染細胞よりも多くの遺伝子の発現レベルが変動することが明らかとなった.AcMNPV感染細胞において発現レベルが上昇した遺伝子群の中から特に発現の高かった2遺伝子についてReal-time qRT-PCR解析を行った結果,AcMNPV感染に伴う遺伝子発現上昇は認められず,RNA-seqの結果の再現性は確認できなかった.一方,発現レベルが減少する遺伝子群については,Real-time qRT-PCR解析によって再現性を確認することができた.発現レベルが減少する遺伝子群の中には,リボソームに関連する遺伝子とアポトーシスに関連する遺伝子が含まれていた. 今回のRNA-seq解析結果から,著しく発現が上昇する遺伝子は検出されなかったことから,rRNA分解のシグナル伝達は,遺伝子発現制御によるものではない可能性が示された.今後は,タンパク質のリン酸化など翻訳後修飾によるシグナル伝達も検討していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
RNA-seq解析によってNPV感染により発現レベルが上昇する遺伝子に注目して今後の実験を進める計画であったが,候補となる遺伝子を見つけることができなかった.発現レベルを指標にした実験を当初計画以上に幅広く行う必要が生じたことと併せて,遺伝子発現とは異なる翻訳後修飾などに着目した研究を新たに進める必要性が生じたため.
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今後の研究の推進方策 |
RNA-seq解析によってNPV感染により発現レベルが上昇する遺伝子をすべて拾い上げ,Real-time qRT-PCR解析で候補となる遺伝子を探索する.さらに,発現レベルを指標にした実験と併せて,遺伝子発現とは異なる翻訳後修飾などに着目し,翻訳後修飾に関わる阻害剤などを用いた研究を新たに進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
RNA-seq解析結果のデータマイニングを業者に委託する予定であったが,研究協力者による多大な協力と学生の努力により業者に委託する必要がなくなったため.
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次年度使用額の使用計画 |
Real-time qRT-PCR解析を当初の計画以上に予定している.さらに,シグナル伝達に関する阻害剤を用いた実験を新たに加えることから,阻害剤の購入費とうに当てる計画である.
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