研究課題/領域番号 |
26292174
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
中鉢 淳 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 准教授 (40332267)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミカンキジラミ / Profftella armatura / ディアフォリン / 質量顕微鏡法 / 抗がん活性 / 共生細菌ゲノム / FISH |
研究実績の概要 |
本研究計画は、次の5項目からなる。解析1:Profftella姉妹種の探索と比較ゲノム解析 / 解析2:ミカンキジラミ体内でのProfftellaの感染・増殖動態の解析 / 解析3:Profftellaの選択的除去による防衛機能の検証 / 解析4:ディアフォリンの局在解析、およびキジラミ個体別濃度解析 / 解析5:ディアフォリンの抗がん効果の検証。 平成28年度は、以下のように研究を実施した。解析1については、複数の共生細菌についてゲノム解析を進めるとともに、海外研究者との連携により、Profftella姉妹系統を保有する可能性の高い南アジア・アフリカ産のDiaphorina spp.の入手経路を確保した。解析2については、宿主卵母細胞への感染や胚発生に伴う共生細菌の局在・形態変化等について、詳細なデータを得た。解析3については、選択的除去が困難とのデータを得、計画を保留する判断に至った。解析4については、「文部科学省・先端研究基盤共用促進事業(共用プラットフォーム形成支援プログラム)原子・分子の顕微イメージング プラットフォーム」のお力添えをいただき、「質量顕微鏡法」を用いたディアフォリンの局在解析に着手した。これまでにディアフォリンのm/z理論値に対応するピークを検出し、ディアフォリンが幼虫の虫体全体に分布する傾向を観察することに成功した。解析5については、「文部科学省新学術領域研究・がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動・化学療法基盤支援活動」のお力添えをいただき、抗がん活性について詳細なデータを得た。これら当初計画に加え、多様な系統の生物に対するディアフォリンの生物活性の検証を進め、Profftellaとの共生関係を支える宿主遺伝子の候補を得ることに成功し、RNA干渉法による機能解析を進めるとともに、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述のように、本研究の当初計画は以下の5項目からなる。解析1:Profftella姉妹種の探索と比較ゲノム解析 / 解析2:ミカンキジラミ体内でのProfftellaの感染・増殖動態の解析 / 解析3:Profftellaの選択的除去による防衛機能の検証 / 解析4:ディアフォリンの局在解析、およびキジラミ個体別濃度解析 / 解析5:ディアフォリンの抗がん効果の検証。 解析1については、これまでにアンプリコン解析により39種のキジラミの多様な共生細菌叢を解明し、一部の共生細菌についてゲノム解析が完了しつつある。解析2については、宿主卵母細胞への感染や胚発生に伴うProfftellaとCarsonellaの局在や形態の変化等について、詳細なデータを得ることに成功し、当初計画どおりの解析を完了した。解析3については、選択的除去が困難とのデータを得、計画を保留する判断に至った。解析4については、「質量顕微鏡法」を用いることでディアフォリンの局在について良好なデータを得つつある。解析5については、肺がん7系、胃がん6系、大腸がん5系、卵巣がん5系、脳腫瘍6系、乳がん5系、腎がん2系、前立腺がん2系、メラノーマ1系の計39系よりなるヒト培養がん細胞パネル等を用いることで、ディアフォリンの抗がん活性について詳細なデータを得た。これら当初計画に加え、多様な系統の生物に対するディアフォリンの生物活性についてデータを取得済みであるばかりでなく、Profftellaとの共生関係を支える宿主遺伝子の候補を得ることに成功し、RNA干渉法による機能解析を進めるとともに、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集を試行しつつある。このように、当初計画の一部については未達の部分があるが、それを補って余りある大きな成果が得られつつあり、研究計画はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
解析1については、Profftella姉妹系統を保有する可能性の高い南アジア・アフリカ産のDiaphorina spp.を入手して16S rRNA遺伝子を標的としたアンプリコン解析を行うことで共生細菌叢を明らかにし、Profftella姉妹系統が見つかり次第、そのゲノムを解析する。また、これまで進めてきた他の共生細菌のゲノム解析についても順次シーケンシングを完了し、比較ゲノム解析を行う。解析4については、ミカンキジラミの卵、幼虫、成虫等、各発生段階の試料を対象に、「質量顕微鏡法」を用いてディアフォリンの局在解析及び定量解析を行い、ディアフォリンの真の標的や発生ステージ毎の機能、ディアフォリン毒性への宿主昆虫の対処法などについて考察する。解析5については、これまでにヒトがん細胞に対するディアフォリンの活性については十分な知見が得られたため、今後はヒト正常細胞に対する活性を検証する。また、当初計画には含まれていなかった内容だが、Profftellaとの共生関係を支えることが期待される宿主遺伝子について、RNA干渉法による機能解析を進めるとともに、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集に基づく機能解析を試行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
700,000円の前倒し支払請求を行ったが、年度途中で他の研究予算を確保出来、余裕が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
700,000円の前倒し支払請求を行ったところ、残余額が327,103円となったもので、実際には平成28年度の当初予定よりも多い額を使用している。このため、「余剰分」としての新規使用計画はない。
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