研究課題/領域番号 |
26292178
|
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
神崎 菜摘 独立行政法人森林総合研究所, 森林微生物研究領域, 主任研究員 (70435585)
|
研究分担者 |
菊地 泰生 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20353659)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ゲノム / 進化 / サテライトモデル / 線虫 / 生理生態 |
研究実績の概要 |
本研究では、イチジク属果実内部に生息し、イチジクコバチに便乗して移動する Caenorhabditis 属の未記載種(Caenorhabditis sp. )、および、ベニツチカメムシ便乗線虫、C. japonica を用いて、これらのゲノム、発現遺伝子解析を行い、その情報を元に新たなサテライトモデル系を構築することを目標としている。 本年度遂行した分を含むこれまでの予備的調査の結果、Caenorhabditis sp. は遺伝的にはモデル生物である Caenorhabditis elegans に非常に近縁であるにもかかわらずその形態的、生態的特徴が大きく異なっていることが明らかになった。 本年度は Caenorhabditis sp. に関して、分類学的記載のための試料準備、系統解析を行うと共に、分離株の採集、純系の確立、また、ゲノム、発現遺伝子解析のため、DNA、RNA の精製を行った。現在までに、記載に用いるための標本の作製、野外における基礎的な生態的情報、また、実験室内での培養性状など、分類学的記載のための基礎情報の取得がなされている。ゲノム、発現遺伝子解析については、これに供試可能な純度の核酸試料の取得が行われており、次年度にこれらを用いて分類学的記載と、ゲノム化学的解析が可能になるものと考えられる。 Caenorhabditis japonica に関しても、培養株の選択、第一次データ取得のための核酸試料の準備が部分的に完了しており、次年度以降にこれらを用いて解析を継続して行うことが可能になっている。 さらに、野外からの培養株(実験用系統)取得の過程において、上記以外のサテライトモデル候補種がいくつか分離されており、これらに関しては分類学的記載を完了した。詳細は今年度の研究業績に記述したとおりである。しかし、ほとんどの種が難培養性であることも同時に明らかになったため、次年度以降、これらのうち培養可能性の高いものを選別し、継続して培養株の確立を試みる必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム解析については、材料の調製が予想より若干早く出来たため、準備状況は計画よりも早まっている。一方、分類学的記載についてはカルチャーの増殖が相当に遅いことが明らかになったため、若干の遅れが生じている。全体としては概ね予定どおりの達成状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
現在のところ、概ね計画通りに進展しており、当初予定から大きな方針転換はない。 線虫の採集記録に関するこれまでの状況を確認したところ、当初予定していたオオバイヌビワ関連種、Ficus hispida 関連種以外にも近縁種がアジアからアフリカにかけての地域に分布している可能性が非常に高いと考えられたため、調査範囲を拡大し、南アフリカ、オーストラリアでの試料採集の機会を設けるため、現地の共同研究者らとその可能性を検討していく予定である。また、当初の予定では、モデル種の分類学的記載、一般的な生態学的情報、ゲノム情報とその応用例の提示を行うこととしていたが、共同研究者の範囲を広げ、発生学的見地からの解析を追加できる可能性があるため、これを具体化していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
・受託解析試料の追加作成に時間を要し、次年度実施することとしたため。 ・国外での調査が天候などの都合で次年度へ延期したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
・受託解析、および試料採集のための海外出張にかかる経費に使用する。
|