研究課題
当初の予定どおり、サテライトモデル系として期待されているオオバイヌビワ由来の Caenorhabditis 属未記載種に関して、新種記載のための形態観察、系統解析、及び形態計測データの取得、全ゲノム配列の決定、ゲノム特性の近縁種との比較解析、生理生態的特性(発生学的特性、フィールドにおける生態的特性)の解明、さらに、遺伝学的解析のプラットフォームの作成(RNAi などの適応性の検討)を終了した。これらのデータは現在、一論文としてまとめ、よりインパクトの高い学術誌への投稿を予定している。上記の種以外にこれに近縁な Ficus hispida 由来の Caenorhabditis 属未記載種に関して、分類学データの取得が完了したため、これに関しては、上記の論文に引き続いての分類学的記載論文の投稿を予定している。また、本種に関してもドラフトゲノム配列の決定が準超に進行しており、このデータは解析終了後、新種記載に続く形での論文投稿を予定している。もう一つのモデル材料として計画していた Caenorhabditis japonica に関しては、昆虫便乗特性(昆虫に対しての化学受容など)に関してのデータを取得しているが、ゲノム情報のアップデートのため、さらに追加の試料を収集する必要が生じたため、これを行い、解析終了後に何らかの形でまとめ、課題終了までに公表を予定している。これに加えて、いくつかの Caenorhabditis 属線虫が野外調査において採集されているため、これらに関して同定、生態的特性の解明を順次行っていく。
2: おおむね順調に進展している
本課題の中心として用いているオオバイヌビワ由来の Caenorhabditis sp. については、ゲノム情報が当初の計画以上に質の高いものと成っており、この点においては想定以上の進捗状況である。同時に、年度内に予定していた新種記載は、ゲノム情報などと同時に公表を行うという形に計画の一部変更を行ったため、公表予定の一部が次年度に持ち越された形と成る。総合的には概ね計画通りの進捗状況である。上記の種以外については、課題期間内の新種記載、ドラフトゲノム情報の取得と公表、化学生態的情報の取得など、当初の計画で上げている点は概ね達成可能な見通しである。加えて、計画には上がっていなかった複数の近縁種の分離がなされた点は、想定以上の進捗状況と考えている。
計画は上記のとおり、概ね順調に進行しており、大きな変更はない。本年度は、御帯イヌビワ由来の Caenorhabditis sp. に関しての論文公表を優先させる。他の種に関しては追加試料、追加ゲノム情報の取得を年度の早い段階で行い、順次論文として公表していく方針である。
主要な材料としていた Caenorhabditis sp. に関しては初期(ドラフト)ゲノム解析費用などが想定よりも低価格で行うことが出来たため、基金分に余剰が生じた。その他の種に関しては概ね予想どおりの金額となった。
主として、オオバイヌビワ由来の Caenorhabditis sp. のゲノム情報の精度向上を目的とした追加データの取得、その他近縁種のゲノム情報追加取得を行う。いずれも次世代シークエンサーによる大量の配列決定を行うため、かなりの費用がかかることが想定される。また、本年度には国際学会が多数行われるため、ここでの発表に要する費用、また、論文投稿時にかかる費用(英文校閲、掲載料など)に用いる。多数の学術論文を想定しているため、ここでもかなりの費用がかかることが予想される。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
Nematology
巻: 18 ページ: 417-437
10.1163/15685411-00002967
Science Advances
巻: 2 ページ: e1501031.
10.1126/sciadv.1501031