研究課題/領域番号 |
26292180
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
笠原 康裕 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (20273849)
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研究分担者 |
小椋 義俊 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40363585)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 微生物生態 / メタゲノム / 森林土壌 / 微生物群集構造 / 撹乱 |
研究実績の概要 |
外的撹乱に対して『土壌微生物生態系は強靱で安定している』と言われている。その安定とは微生物群集の構造なのか機能なのか。本研究は、抵抗性、復元力、機能重複性を安定性指標として、短期高温撹乱と長期低温撹乱を起こした森林土壌の微生物生態系の維持機構を明らかにすることを目的としている。 今年度は、(1)山形大学農学部鶴岡演習林で毎年行われている山焼き(短期・高温撹乱)の土壌と(2)北海道大学苫小牧研究林の温暖化実験区の土壌を対象として、経時的な土壌微生物群集の組成や多様性の構造の変動解析を行った。(1)火入れ撹乱の前後での火入れフィールド内の3地点において、2014年火入れ前、火入れ後:1日、21日、76日、369日747日後と2015年火入れ前と火入れ後:1日、39日417日後の土壌を解析した。(2)2006年温暖化開始から2009年、2011年と2016年の土壌を解析した。 メタゲノム解析について、解析する対象生物種についてプライマーを設計した。細菌(16SリボゾームDNA)、糸状菌(ITS:内部転写スペーサー領域)、真核微生物(18SリボゾームDNA)、繊毛虫(18SリボゾームDNA内原生生物特異的配列領域)である。DNA配列決定にMiseqを使用し、QIIMEによる群集解析を行った。 結果は、(1)山焼きフィールド:2014年と2015年ともに火入れ直後はどの生物種もその種組成が大きく変化した。その後徐々に火入れ前の現状に戻りつつあるが、特に細菌群においてその回復力は大きい。(2)温暖化フィールド:10年間の土壌温暖化にもかかわらず、無処理区と比較しても、どの生物種も種構成に著しい変化は観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究計画通り、2つの山焼きフィールドの土壌11サンプルと温暖化フィールドの8サンプルについて、4種対象生物についてメタゲノム解析を行い、群集構造解析行うことができた。予想以上の解析結果が得られ、撹乱前後の微生物群集変動や土壌微生物生態系の安定性の考察が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、火入れフィールドでの土壌採取を3年後(2014年火入れ)、2年後(2015年火入れ)と継続し、4種対象生物について、同様にメタゲノム解析を行っていく予定である。土壌環境メタデータ解析については、これまでの土壌試料と合わせて外部委託による解析を行っていく。最終年度のため、各生物種の変動と環境メタデータについて総合的な変動解析、多変量解析を行い、土壌微生物生態系の維持機構について考察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間4年のうち、3年間実験補助員を雇用するための人件費を基金助成金に充てるよう計画している。そのため、次年度の最終年度も雇用できるよう人件費を確保したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額を実験補助員の人件費に充てる予定である。
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