研究課題/領域番号 |
26292181
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鷲谷 いづみ 中央大学, 理工学部, 教授 (40191738)
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研究分担者 |
宮崎 佑介 白梅学園短期大学, その他部局等, 講師 (10721631)
大谷 雅人 兵庫県立大学, 付置研究所, 准教授 (50582756)
境 優 中央大学, 理工学部, 助教 (10636343)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 里地・里山 / 指標 |
研究実績の概要 |
27年度までの研究成果を踏まえ、各サブテーマの研究を進展させた。 生物多様性地域戦略に基づく実践が着実に進められている北海道黒松内町の朱太川流域、自然再生推進法に基づく先進的な里山を対象とした自然再生事業が進められている岩手県久保川イーハートーブ自然再生事業地、森、里、川、海のネットワークを重視した新しい自然保護地域協働管理が目指されている新設奄美群島国立公園の奄美大島森林地域をフィールドとして、事業や実践と密接に関わらせながら、生物多様性・生態系サービス指標と評価手法の開発をすすめ、地域社会との情報共有をはかった。 北限のブナ林域の朱太川のいくつかの支流では、モザイク性指標や樹冠サイズ指標、地形や市街地・農地との空間的関係などと生物多様性の生物指標(本研究で見いだされる指標種、天然アユなど)との相関関係を分析することをめざして調査をおこなったところ、湧水支川が独特の水生昆虫相をもち、その効果は合流点近くの本流にも及ぶことから、河川ハビタットのモザイク性において重要性が高いことが明らかにされた。 広大な二次林面積をもつ奄美大島では、亜熱帯性照葉樹林の生物多様性指標(鳥類相、渓流性トンボ類、樹洞、ニホンミツバチ、リュウキュウコノハズク)の調査データを多く取得し、その分析・評価にもとづいて、保全上重要な区域を地図化したところ、どの指標をとっても新設国立公園の指定範囲内であることが示され、本研究で取り上げたいくつかの指標は、生物多様性保全上重要な地域を選定するために十分に役立つことが明らかとなった。ニホンミツバチについては、落葉樹林(久保川イーハートーブ自然再生事業地)および照葉樹林の両方で巣に持ち帰る花粉の採集とともにダンスの解析を行い、生態系プロセスを巣内での行動や貯蜜と関連させて、生態系サービスのポテンシャルを評価し、「ニホンミツバチの持続可能な養蜂」について提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いずれのサブテーマについても当初の計画に沿って順調に進展している。年度計画にも予定通り取り組み、ほぼ予想通りの研究成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで3年間の研究成果を踏まえ、生物多様性と生態系サービスとの関係を明瞭にすることを重視して各サブテーマを進展させ、総合的な考察を行う。 朱太川流域の渓流河川において湧水点との関連を重視し、水生昆虫相および魚類の生息の生物季節に焦点をあてて調査をする。それにより、流域において生物多様性保全上重要なホットスポットと淡水魚を介した生態系サービスの視点から重要な地点を物理的な環境から推測するための指針を明らかにする。同時に、アユの放流の停止と天然アユの生態系サービスに関して評価し、生物多様性戦略の実行・自然再生が地域にもたらす価値や情報共有の効果を評価する。 奄美大島において亜熱帯性照葉樹林の生物多様性指標の調査データをさらに充実させ、それらの情報を樹冠サイズ指数のマップと重ね合わせて、保全上とくに重要な森林や生態系サービス提供の視点から重要な地域を明らかにする。さらに、2017年3月に新たに国立公園に指定された区域のゾーニングとの関係を評価する。 ニホンミツバチについては、照葉樹林帯において、透明巣箱を用いた巣に持ち帰る花粉の採集と、ビデオ画像を用いて採餌にかかわるダンスの解析を行い、花資源としての植物との生物間相互作用を詳細に分析・評価する。その際、花粉量の多寡から花粉源植物と蜜源植物を峻別することにより、生態系サービスのポテンシャル評価を行う。空間利用と生物間相互作用に関してより詳細な分析を行うため、調査地においてドローン画像を取得し、ダンス解析、花粉解析と組み合わせて、採餌対象であるとともに授粉に寄与する植物種とその空間的なパターン点を把握する。 東北地方の里山の自然再生地域では、昆虫(水生昆虫、鱗翅目)をおもな指標としてそのモザイク性が生物多様性にもたらす効果を検証する。とくに長期間放棄されていた棚田の自然再生で創出された多様な湿地の効果を重視した検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度の交付申請時に予定していたPD研究員の雇用を諸事情により見合わせたため。
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次年度使用額の使用計画 |
花粉標本の分析とデータ解析を専門に行うPD研究員を雇用するための人件費にあてるほか、多くの旅費を必要とする北海道黒松内町および奄美大島への旅費に使用する。
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