研究課題/領域番号 |
26292182
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
土居 克実 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (40253520)
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研究分担者 |
田代 康介 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00192170)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シリカ / Thermus thermopilus / 鉄飢餓 / Feric uptake regulator |
研究実績の概要 |
T. thermophilus HB8のSipの誘導産生条件を検討するため、必要に応じてTM培地にメタケイ酸ナトリウムを溶解し、200, 400, 600 ppm SiO2を含むTM培地で70℃にて培養した。鉄欠乏TM培地は、溶存金属イオンを除去した後、鉄以外の金属イオンを補完することで調製した。その結果、シリカ濃度400 ppm以上でSipの著量生産が認められた。これは、培養温度70℃におけるシリカの飽和濃度をわずかに超えており、Sipの誘導には飽和濃度で形成されるコロイドシリカの存在が重要であることが確認された。また、鉄欠乏培地でもSipは誘導産生されることが明らかとなった。 次に、上記の各種培養を行ったHB8株からRNAを精製し、これを用いてNorthern blot解析、及び半定量RT-PCR、primer extensionを行った。また、通常培養、600 ppmシリカ含有培地での培養、鉄欠乏培地での培養から抽出したRNAを用いて、DNA microarray解析を行った。その結果、sipは下流の2つの遺伝子とともにオペロンを形成しているものと推察されたが、Northern解析ではsipのみが強く検出されており、主にモノシストロニックな転写が起こっていると考えられた。また、primer extensionにより、転写開始点が決定され、sipのプロモーター領域が推定された。sipプロモーター領域はThermus属のhousekeeping遺伝子によくみられるσA-typeのプロモーターと類似しており、通常時はリプレッサーにより転写が抑制されていることが示唆された。DNA microarrayでは、過飽和シリカによる刺激と鉄欠乏による刺激に応答する遺伝子群がほぼ類似しており、過飽和シリカによって鉄欠乏がおこっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に設定した研究課題が解決でき、その成果を2報の国際学会誌に掲載することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの結果から、Sipの発現メカニズムを以下のように推定した。即ち、過飽和条件下で生成されるコロイドシリカが鉄イオンを吸着し、利用可能な鉄濃度が減少する。この鉄濃度減少に応答して、Furがsipプロモーター領域から乖離し、転写がONになり、Sipの著量産生を導くものである。 今年度、耐熱性GFPを用いたレポーターアッセイ系の構築を試みたが、HB8株内でGFPがうまく発現できず、測定には至らなかった。今後、使用コドンの最適化などを試みる予定である。また、今年度の結果から、鉄欠乏培地でSipが著量誘導産生されることが明らかとなったことから、シリカによる鉄欠乏を誘導条件として、各種微生物(特に大腸菌)を用いた異種タンパク質発現誘導システムを構築することを考えている。
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