研究課題/領域番号 |
26292184
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
秋山 博子 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (00354001)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 温室効果ガス / 一酸化二窒素 / 土壌 |
研究実績の概要 |
本提案課題は、圃場でのN2Oフラックス連続測定、レーザー分光N2O同位体計によるN2O安定同位体自然存在比の連続測定および土壌微生物解析を組み合わせたN2O発生メカニズムの全体像の解明を行うことを目的としている。 平成26年度の研究概要は下記のとおりである。 (1)レーザー分光N2O同位体計を用いたN2O安定同位体比の連続測定システムを開発した。本システムの概要は下記の通りである。 ①レーザー分光計1台にチャンバー12台を接続し、各チャンバーラインを電磁弁により切り替える。②チャンバーの大きさは45cm×45cm×高さ45cmの自動開閉式である。③チャンバー閉鎖時間は11時間である。これは、N2Oガスフラックス測定時にはチャンバー閉鎖は短時間が望ましいためフラックス連続測定システムでは閉鎖時間30分としているが、同位体比測定のためにはチャンバー内濃度をより高濃度とする必要があるためである。④レーザー分光同位体計の測定時間はチャンバー閉鎖後10時間半より約30分であり、チャンバー蓋を開く直前1分間のデータの平均値を同位体比の解析に用いる。1サイクル(チャンバー12台)に12時間であり、一日各チャンバー2回の測定である。 (2)日本の代表的な農耕地土壌である黒ボク土と灰色低地土の圃場においてN2Oフラックスの自動連続モニタリングを行った。化学肥料(尿素)区および有機肥料(鶏糞ペレット)区の二つの処理区を設け、ニンジンを栽培した。各区3連とした。その結果、有機肥料区からのN2O発生量が化学肥料区よりも多いことが明らかになった。またN2Oの発生量は基肥後が最も多かったが、収穫後の残渣からもN2Oの発生がみられた。収穫後の残渣からN2O発生に関与する脱窒カビを分離しN2O発生ポテンシャルを測定した結果、脱窒カビが収穫後のN2Oの発生に関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、レーザー分光N2O同位体計を用いたN2O安定同位体比の連続測定システムを開発した。また日本の代表的な農耕地土壌である黒ボク土と灰色低地土の圃場においてN2Oフラックスの自動連続モニタリングを行い、有機肥料区からのN2O発生量が化学肥料区よりも多いことを明らかにした。さらに収穫残渣より脱窒カビを分離し、収穫後のN2O発生において脱窒カビがN2O発生に寄与していることを明らかにした。 上記のことから、計画通り順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に開発したN2O安定同位体比の連続測定システムを用いて、黒ボク土および灰色低地土の圃場におけるN2O安定同位体比の連続測定およびN2Oフラックスの連続測定を行い、N2Oの発生経路(硝化、脱窒、カビ脱窒)の割合を推定する。これらの発生経路が土壌の種類によって異なるか、また施肥の種類(化学肥料、有機肥料)により異なるかどうかを明らかにする。また発生経路の季節的な変化(施肥直後、収穫期等)を明らかにする。同時に、同一サンプルをレーザー分光計と質量分析計の両方で分析を行い、同位体比の校正を行う。 また脱窒カビの分離およびN2O発生ポテンシャルの測定を行い、同位体比の解析と合わせてN2O発生における脱窒カビの重要性を明らかにする。 これにより、N2Oフラックス連続測定、レーザー分光計を用いた安定同位体比の連続測定と微生物解析を組み合わせた実際の圃場におけるN2O発生メカニズムの解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
契約研究員1名が途中で退職したこと、および、本経費で雇用予定であった契約研究員について別のプロジェクトに専念する必要が生じたため、人件費の使用額が予定の半額程度になったことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、本経費により契約研究員1名を新たに雇用し、質量分析計とレーザー分光計のN2O同位体比の校正等の作業を行う予定であり、このための人件費として使用する。 また、昨年度開発したレーザー分光計を用いたN2O同位体比測定システムを実際に稼働させて圃場実験を行う予定であり、このための物品費が必要である。
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