研究課題/領域番号 |
26292184
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研究機関 | 国立研究開発法人 農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
秋山 博子 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (00354001)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 農業環境 / 温室効果ガス削減 |
研究実績の概要 |
N2Oは強力な温室効果ガスであるとともにオゾン層破壊物質でもある。農業はN2Oの最大の人為的排出源であり、その主要な発生源である農耕地におけるN2Oの発生メカニズムの解明および発生削減技術の開発は急務である。 N2Oの発生経路は主に微生物による硝化および脱窒と考えられている。本課題は、応募者らがこれまでに開発した手法を発展させ、圃場でのN2Oフラックス連続測定、レーザー分光N2O同位体計によるN2O安定同位体自然存在比の連続測定および土壌微生物解析を組み合わせたN2O発生メカニズムの全体像の解明を行うことにより、将来的な発生抑制技術の開発につなげることを目的とした。27年度は下記の研究を行った。 (1)ライシメーター圃場(黒ボク土、灰色低地土)において、ニンジンを栽培した。処理区は有機肥料区(豚糞ペレット)および化学肥料(尿素)区とした。N2O発生量の連続測定、N2O安定同位体比および土壌中無機態窒素の測定を行った。その結果、黒ボク土において、有機肥料(豚糞ペレット)区からのN2O発生量は尿素区よりも多かった。しかし、灰色低地土においては有機肥料区と尿素区のN2O発生量に差は見られなかった。同位体比解析の結果から、化学肥料区においては硝化が、有機肥料区においては脱窒がより重要な発生経路と考えられた。 (2)上記圃場において、施肥1週間後の土壌から糸状菌を分離した。分離した糸状菌のうち約3割の菌が、非常に高いN2O発生ポテンシャルを示した。 (3)黒ボク土圃場において、バイオ炭によるN2O発生量削減効果の評価を行った。その結果、バイオ炭(もみ殻燻炭、竹炭、木炭2種類)施用によるN2O発生量削減効果およびCH4吸収量促進効果はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、圃場試験においてN2O発生量測定とN2O安定同位体比測定を行い、発生経路を明らかにした。またバイオ炭のN2O削減効果の評価を行い、今回用いたバイオ炭については明瞭な効果がみられないことを明らかにした。また、N2Oの発生に関与する微生物である、土壌中の糸状菌を分離し、分離株のうち約3割の菌が非常に高いN2O発生ポテンシャルを示すことを明らかにした。 上記のことから、当初の計画通りの進捗と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、26年度に開発した安定同位体比の圃場連続測定システムを用いたN2O安定同位体自然存在比の連続測定を実施し、土壌の種類や農地管理によるN2O発生経路の違いを明らかにするとともに、N2O発生ピークにおけるN2O発生経路の時間的な変化を明らかにする。また最終年度である28年度は微生物解析と安定同位体比解析を組み合わせた解析を行い、実際の圃場におけるN2Oの発生経路を明らかにする。
1.圃場実験:農業環境変動研究センター内の黒ボク土(6プロット)および灰色低地土(6プロット)のライシメーター圃場(各3m×3m)においてニンジンを栽培する。処理区は化学肥料区および有機肥料区(各3連)とする。N2Oの発生量および同位体比の連続測定を行内。同時に土壌中無機態窒素の分析を行う。これらにより、日本の代表的な畑土壌である黒ボク土および灰色低地土における、化学肥料および有機肥料施用後のN2O発生経路の解明を行う。 2.上記圃場において、脱窒糸状菌などのN2O発生に関わる微生物を分離し、解析を行う。 3.N2O発生モニタリング、同位体比解析および微生物解析を組み合わせ、本課題での3年間のデータを解析し、実際の圃場におけるN2O発生経路を明らかにする。 以上により、実際の環境中におけるN2O発生メカニズムの全体像の解明に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、契約研究員の月数が予定より少なかったこと等により、繰り越しが発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度においては、契約研究員2名および実験補助員2名を雇用し、最終年度のとりまとめに向けて研究を加速させる。このため、次年度使用額を効率的に活用する。
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