研究課題/領域番号 |
26292185
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
加藤 邦彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター生産環境研究領域, 主任研究員 (40450324)
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研究分担者 |
井上 京 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30203235)
和木 美代子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産環境研究領域, 主任研究員 (10355092)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 伏流式人工湿地 / アナモックス / 硝化 / 脱窒 / 窒素削減 / 排水処理 / 水質浄化 |
研究実績の概要 |
1.背景と目的 好気的な鉛直流と嫌気的な水平流を組合せたハイブリッド伏流式人工湿地は窒素の浄化処理能力が高く畜産排水処理への利用が進みつつある。しかし、C/N比の低い有機性汚水の処理においては硝酸態窒素の残存が課題として残されている。アナモックス菌は亜硝酸とアンモニアから窒素ガスを生成させる微生物であり、この反応に炭素源を必要とせずに汚水からの窒素除去を行うことができる。水質条件やろ過資材の性状など、人工湿地の状態に応じたアナモックス菌の分布を解明することにより、アナモックス反応を活用したハイブリッド人工湿地システムの設計手法の開発に資する。 2.方法 畜産系有機性排水(養豚汚水、酪農排水、チーズ工場排水)を処理するハイブリッド伏流式人工湿地において、(1)6施設の水質・水量・水温のモニタリング調査、(2)養豚排水処理施設1ヶ所、酪農排水処理施設1ヶ所(計2施設)におけるボーリング調査と流入・流出負荷の評価、(3)リアルタイムPCRを用いて、6施設の排水処理水中のアナモックス細菌数の定量解析を行った。 3.結果と考察 (1)6施設の原水量は5.2~34.3トン/日、原水濃度はBOD500~7500mg/L、全窒素30~1650mg/Lと多様で、人工湿地による最終処理水はBOD17~131mg/L、全窒素4~441mg/Lで、浄化率はBOD74~99%、全窒素41~86%であった。(2)2施設のボーリング調査試料中の窒素量を分析中で、窒素の流入・流出負荷と比較解析する計画である。 (3)アナモックス細菌のDNAは6施設中4施設で検出され、特に多段式人工湿地システム後段の硝酸態窒素濃度の高い処理水について高濃度で検出された。この理由として、当該条件において、硝化もしくは部分的な無酸素条件において生じる脱窒の中間体としてアナモックス細菌の基質となる亜硝酸が存在したためと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伏流式人工湿地ろ過システムによる畜産排水処理水中にアナモックス細菌のDNAが検出された。アナモックス菌の分布とハイブリッド人工湿地システムの水質条件の関係を解析することにより、アナモックス反応を促進する条件を解明できる可能性が見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
人工湿地の水質・水量・水温のモニタリング、ボーリング試料の分析と流入・流出負荷の炭素・窒素の物質収支の解析と評価、アナモックス細菌数の分布と人工湿地の水質条件の検討からアナモックス反応促進条件を解明する。これにより、窒素浄化効率を最適化するハイブリッド人工湿地システムの設計法の開発に資する。また浄化効率を予測するモデルを開発し、モニタリングしている施設のデータを用いて適合性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額344,318円は、研究費を効率的に使用して発生した残額である。研究計画を円滑に進行するため次年度に使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
人工湿地の水質・水量・水温のモニタリング、窒素などの物質収支の解析と評価、アナモックス反応の促進条件の解明、窒素浄化効率を最適化するためのシステム設計法の開発に向けて、研究費を有効に使用する。
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備考 |
ハイブリッド伏流式人工湿地ろ過システムによる有機性排水浄化法に関する研究成果を紹介しています。
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