研究課題
種々の環境ストレスは植物において光合成等の電子伝達系を撹乱し、余剰電子を生みだす。これにより、活性酸素種が細胞内に発生し、酸化ストレスが細胞にもたらされる。本研究では、酸化ストレス誘導性植物細胞死の抑制因子であるBI-1の結合因子として単離された複数の脂質代謝酵素に注目し、環境ストレス応答における役割を明らかにすることを目的として、モデル植物であるイネ、およびシロイヌナズナを対象として研究を行った。これまでに、BI-1の結合因子として、小胞体膜上に存在するFAH(fatty acid hydroxylase)、ELO(elongase)、SLD(shingolipid desaturase)が単離され、それらとBI-1の結合性を検出し、BI-1の有無が細胞膜のスフィンゴ脂質組成に影響を与えることを明らかにした。スフィンゴ脂質は細胞膜上で受容体、キナーゼ、輸送タンパク質などが局在し、環境応答シグナル伝達の場となるマイクロドメイン(脂質ラフト)をステロールと共に構成していると考えられている。植物の細胞膜マイクロドメインの構造や機能の大部分は未知であったが、本研究により、酸化ストレスに対する植物の応答の場としての重要性と、これを構築するための小胞体膜上の酵素複合体の重要性が明らかとなった。さらに、個々のスフィンゴ脂質代謝酵素をコードする遺伝子のノックアウト、ノックダウン、高発現シロイヌナズナ系統の作出と解析により、スフィンゴ脂質の低温応答や病原抵抗性における関与が示された。これらの研究成果をさらに発展させることにより、将来的には環境ストレス耐性作物や、耐病性に優れた作物の分子育種に貢献できると考えている。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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