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2015 年度 実績報告書

概日時計機構を利用した植物のストレス応答戦略

研究課題

研究課題/領域番号 26292191
研究機関千葉大学

研究代表者

華岡 光正  千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (30508122)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード葉緑体 / 概日時計 / ストレス応答 / シグマ因子 / 転写制御
研究実績の概要

固着生活を営む植物は、過酷な自然環境下で生き抜くための独自のストレス適応戦略を持っている。従来のストレス応答の研究は、実際にストレス環境下におかれた際の植物の応答を調べるものであったが、本研究では視点を大きく変えて、来たるべきストレスを「待ちかまえる」植物独自の新しい環境適応戦略を明らかにすることを目的とした。特に、昼夜の明暗サイクルに適応するための内在システムである概日時計の生理的役割に着目し、細胞核と葉緑体間における時間シグナル伝達機構の解析を通じて、概日時計による葉緑体機能制御と、昼夜の光環境変化によるストレスから光合成機能を守るメカニズムの解明を目指した。
27年度は、葉緑体の様々な状態を核の遺伝子発現に伝える「プラスチドシグナル」と呼ばれる情報伝達経路に注目して研究を行った。葉緑体の光合成機能制御にあたっては、実際の光合成の場である葉緑体の状態をモニターするメカニズムが存在するとの仮説に立ち、ノルフラゾン(カロテノイド合成の阻害)やリンコマイシン(葉緑体RNAの翻訳阻害)など葉緑体の機能を特異的に阻害する薬剤を用いて、核遺伝子の発現パターンの変化を調べた。その結果、概日時計の中心振動体を構成する遺伝子の発現には葉緑体機能阻害の影響が見られなかったが、葉緑体で機能する光合成関連遺伝子CAB3の発現リズムは失われることが分かった。このことから、通常の環境においては夜明け前の時間情報を正常に葉緑体に伝えることができるが、受け手側の葉緑体に異常が起こると、概日時計を利用した「待ちかまえる」ストレス応答ではなく、通常のストレス応答に切り替わることが予想され、その制御に葉緑体から核へのプラスチドシグナルが関与することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画に記載した内容にしたがって順調に進められている。概日時計による葉緑体遺伝子の発現制御、また葉緑体機能阻害による核遺伝子の発現パターン変化を捉えることができ、双方向のシグナル伝達が重要であることを明らかにし、今後の研究に繋ぐことができたと考えられる。

今後の研究の推進方策

27年度に行った研究で残された課題として、明確な表現型変化の観察やターゲット遺伝子の拡充など、論文投稿に向けてさらに細かい点を押さえる必要があり、それらは28年度の早い段階で完了させていきたい。基本的には当初の研究計画にしたがって3年目以降の研究を進める。計画を上回る成果を挙げられるよう、効率的な研究推進に努める。

次年度使用額が生じた理由

研究協力者の雇用を予定していたが、適切な候補者を見つけることができなかったため。また、4年間の研究計画の特に後半に重要な課題が多く含まれるので、研究費総額との兼ね合いで、3-4年目である平成28-29年度に雇用することがより効果的であると考えられたため。

次年度使用額の使用計画

次年度(平成28年度)の4月より研究協力者を雇用することが決定しており、平成28-29年度は人件費として相応の経費が必要となることが見込まれている。学術研究助成基金助成金は全く使用してこなかったが、平成28-29年度で効率的に使用していく予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] ブリストル大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      ブリストル大学
  • [雑誌論文] The nuclear-encoded sigma factor SIG4 directly activates transcription of chloroplast psbA and ycf17 genes in the unicellular red alga Cyanidioschyzon merolae2015

    • 著者名/発表者名
      Gaku Fujii, Sousuke Imamura, Atsuko Era, Shin-ya Miyagishima, Mitsumasa Hanaoka and Kan Tanaka
    • 雑誌名

      FEMS Microbiology Letters

      巻: 362 ページ: fnv063

    • DOI

      10.1093/femsle/fnv063

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 共生によるレトログレードシグナリングの成立と進化2015

    • 著者名/発表者名
      華岡光正
    • 雑誌名

      生物科学

      巻: 66 ページ: 208-212

    • 査読あり
  • [学会発表] 単細胞紅藻シゾンの概日時計応答に関わる細胞内シグナル伝達の解析2016

    • 著者名/発表者名
      片野貴章、雪竹健太郎、恵良厚子、宮城島進也、藤井岳、今村壮輔、田中寛、華岡光正
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岩手大学(岩手県盛岡市)
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-18
  • [学会発表] 葉緑体内の光環境変化に依存した核と葉緑体間の遺伝子発現協調2015

    • 著者名/発表者名
      安間美里、猪狩温、林健太郎、横山栞、齊藤光紀、鈴木雄介、江波和彦、華岡光正
    • 学会等名
      BMB2015(第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学会大会合同大会)
    • 発表場所
      神戸国際展示場(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-03 – 2015-12-03
  • [学会発表] Chloroplast-dependent regulation of nuclear gene expression in Arabidopsis thaliana.2015

    • 著者名/発表者名
      Misato Anma, Atsushi Ikari, Kentaro Hayashi, Shiori Yokoyama, Mitsunori Saito, Yusuke Suzuki, Kazuhiko Enami, and Mitumasa Hanaoka
    • 学会等名
      2nd International Symposium "Matryoshka-type Evolution of Eukaryotic Cells"
    • 発表場所
      筑波大学会館(茨城県つくば市)
    • 年月日
      2015-10-01 – 2015-10-01
    • 国際学会
  • [学会発表] 転写因子RpaA・RpaBの協調によるシアノバクテリアの概日時計出力系の制御2015

    • 著者名/発表者名
      徳山城永、小堀奈美、木村明日香、高井直樹、岩崎秀雄、近藤孝男、田中寛、華岡光正
    • 学会等名
      第6回光合成学会・シンポジウム
    • 発表場所
      岡山国際交流センター(岡山県岡山市)
    • 年月日
      2015-05-22 – 2015-05-22

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公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-01-31  

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