研究課題
固着生活を営む植物は、過酷な自然環境下で生き抜くための独自のストレス適応戦略を持っている。従来のストレス応答の研究は、実際にストレス環境下におかれた際の植物の応答を調べるものであったが、本研究では視点を大きく変えて、来たるべきストレスを「待ちかまえる」植物独自の新しい環境適応戦略を明らかにすることを目的とした。特に、昼夜の明暗サイクルに適応するための内在システムである概日時計の生理的役割に着目し、細胞核と葉緑体間における時間シグナル伝達機構の解析を通じて、概日時計による葉緑体機能制御と、昼夜の光環境変化によるストレスから光合成機能を守るメカニズムの解明を目指した。最終年度は、植物が概日時計を用いて「待ちかまえる」ストレス応答について集中的に解析を行った。概日時計に制御され、朝に発現ピークを示す光ストレス関連の遺伝子をマイクロアレイデータベースから探索し、候補に挙がった遺伝子の発現を調べた。その結果、光ストレスの防御に関わる一連の遺伝子発現が夜明け前から上昇したのに対して、光化学系を保護する因子は夜明け直後に発現が上昇していることが示された。これらの遺伝子の発現上昇は、CAB3を代表とする光合成関連遺伝子よりも早いタイミングで発現が上昇していたため、光化学系のタンパク質を合成することよりも光化学系を守る制御の方が先んじて行われることが分かった。また、夜明け前から上昇する遺伝子は概日時計に制御され、夜明け後に発現が上昇する遺伝子は主に光によって発現が制御されると考えられた。一連の表現系解析も含め、植物は概日時計を用いて夜明け後の光ストレスを「予防」するとともに、速やかな光応答によって光ストレスを『緩和』していることが予想された。この『予防』と『緩和』二つの防御機構によって植物は日中に被る光ストレスから身を守っている可能性が示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nucleic Acids Research
巻: 45 ページ: D551-D554
10.1093/nar/gkw1131