研究課題/領域番号 |
26293001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 美洋 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90226019)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | α-アミノ酸 / β-アミノ酸 / カルボキシル化 / 二酸化炭素 / 炭素固定 |
研究実績の概要 |
申請者らはこれまで「CO2を一炭素資源として利用したα-アミノ酸及びβ-アミノ酸類の合成」を達成しているが,これらはいずれもラセミ体での合成であった.そこで本研究課題ではこれまでの研究を更に展開し,「CO2を一炭素資源として利用したα-アミノ酸及びβ-アミノ酸類の不斉合成法の開発」を目的としている.前年度までの検討で「α-アミノ酸の不斉合成」に関しては,イミン中間体へのCu触媒を用いたシリル基の不斉付加反応,及び光学活性α-アミノシリル化合物のCO2による立体保持カルボキシル化反応を連続でおこうなうことにより,「CO2を一炭素資源として利用したα-アミノ酸類の不斉合成法」を確立することができた.一方,これらの合成法はフェニル基またはビニル基などα位にアニオン安定化能を有するα-アミノ酸類にしか適用できないという欠点がある.そこで今年度は,α位にアニオン安定化能を持たないα-アミノ酸類の合成に適用できる反応系の開発を検討した.その結果,アンモニウムイリドのカルボキシル化,引き続くアリル基の転位を経由する新規α-アミノ酸類の合成法の開発に成功した.現在のところ本法はラセミ体のα-アミノ酸類にしか適用できないが,本合成法で得られるα-アリルグリシン誘導体のアリル基は様々な官能基へと変換できることから「CO2を一炭素資源として利用したα-アミノ酸類の合成法」としての適用範囲が格段に広がった.また,「CO2を一炭素資源として利用したβ-アミノ酸類の不斉合成法」に関する本年度の研究では,これまでの検討によってイナミド誘導体とCO2からNi触媒を用いたカルボキシル化反応によって合成が可能となっている「3置換β-アミノアクリル酸誘導体」の不斉水素化を検討し,Rh触媒を用いた不斉水素化反応が高エナンチオ選択的に進行することも見出すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り,すでにCO2を一炭素源として用いるα-アミノ酸類の不斉合成に成功し,また現在はラセミ体のみの反応系であるがその適用範囲の拡大にも成功している.また,β-アミノ酸類の不斉合成に関しても,Ni触媒存在下,イナミドのCO2によるカルボキシル化反応によって得られる3置換β-アミノアクリル酸誘導体のRh触媒による不斉水素化反応にも成功し,β-アミノ酸類の不斉合成にも成功している.
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今後の研究の推進方策 |
上述のように研究は計画通り順調に進行しているが,今後の課題については以下の点が挙げられる. 1)CO2を一炭素源として用いたα-アミノ酸の合成において,α位にアニオン安定化能を持たないα-アミノ酸類の合成に適用できる反応系の開発に今年度成功したが,この方法の不斉反応への展開 2)CO2を一炭素源として用いたβ-アミノ酸の合成においては,3置換β-アミノアクリル酸誘導体合成反応の触媒反応化 3)4置換β-アミノアクリル酸誘導体の触媒的不斉水素化反応の検討 この1)~3)の課題を克服し,より実用的な有効な「CO2を一炭素資源として利用したα-アミノ酸及びβ-アミノ酸類の不斉合成法の開発」を目指し,残りの期間で研究を強力に推進していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
直接経費次年度使用額が72,852円となっているが,この分に関しても平成27年度の研究計画に従って3月末までに執行済であり,支払い手続き上,次年度に繰り越されたものである.
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り,平成27年度研究計画に従い,3月末までに執行済である.
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