研究課題
ベンザインとイノラートとの3連続付加環化反応によるトリプチセンの合成に関してフローマイクロリアクターを用いて反応の時空間制御を検討した。予め調製したイノラートとベンザイン前駆体の混合溶液とアルキルリチウム溶液をシリンジポンプで送液し、マイクロミキサー内で混合、生じた混合物をNMRで分析しトリプチセンの収量を算出した。ベンザイン前駆体としてジハロベンゼンを用いた場合、0度、反応時間10秒で約30%の収率でトリプチセンを得ることができ、この結果はバッチ反応の結果(収率25%)よりも高収率であった。副生成物にアルキルリチウムとベンザインとの付加成績体が多く含まれていた。そこで次にアリールボロン酸エステルをベンザイン前駆体として検討した。まず、アリールボロン酸とブチルリチウムを送液し-78度で第2のマイクロミキサー内で混合し、約1分後に予め調製したイノラート溶液とをマイクロミキサー内で混合しトリプチセンをフロー合成した。詳細に実験条件を検討したところ、第2のマイクロミキサーでの混合温度を40度に設定した場合、最高33%でトリプチセンを単離することに成功した。フローマイクロリアクターでのトリプチセンの合成の特徴は副生成物の種類が格段に減少したことにある。バッチ反応では複雑な副生成物が生成し、トリプチセンの精製が極めて煩雑であったが、この方法により精製が容易となった。ステモナミンの全合成研究において鍵中間体の合成を精力的に行い、量的合成を達成した。その後の予備試験においてD環の構築を検討し、微量ではあるが全合成を達成した。
2: おおむね順調に進展している
フローリアクターによるトリプチセンの合成に関しては、バッチ反応と同等もしくはそれ以上の収率を達成し、副生成物の抑制にも成功したので、ほぼ順調に進展したと考えている。ステモナミンの全合成に関しては、鍵中間体の合成に多少手間取り、予定より時間がかかったものの、全合成に達した。
トリプチセンの合成に関しては、官能基化したベンザインを用いて反応を検討し、官能基化トリプチセンの合成を行う。ステモナミンの合成に関しては、合成工程の短縮および最終生成物の光学純度の決定及び光学的安定性の検証を行う。
合成研究過程で中間体合成の再現性が取れないという予想外の事態が生じたためその解決に時間を要し、経費のかかる次の合成過程が次年度に持ち越されたことが主な理由である。
主に試薬や汎用器具などの消耗品に使用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 55 ページ: 5272-5276
10.1002/anie.201600400
Chem. Eur. J.
巻: 21 ページ: 11590-11602
http://dx.doi.org/10.1002/chem.201501304
Chemical Biology & Drug Design,
巻: 86 ページ: 1304-1322
10.1111/cbdd.12594
http://www.cm.kyushu-u.ac.jp/dv01/contents/research2.html