研究課題
イノラートとアラインとのトリプル環化反応による9-ヒドロキシ置換トリプチセンの合成と変換反応について検討した。3つのメトキシ基がシン配置となったトリプチセン(平成26年度報告済み)の9位水酸基をメチル化したところ、有機溶媒に対する溶解性が向上し精製が容易になった。2,7,14位にフッ素を導入したトリプチセンの合成にも成功した。そこからオルトリチオ化でトリプチセンアラインの生成を試みたが成功しなかった。しかし、フッ素のオルト位をヨウ素化したのちリチウムハロゲン交換で試みたところ、トリプチセンアラインの生成に成功した。この成果は今後、トリプチセンの環拡張に有効である。3-トリメチルシリルベンザインとイノラートとのトリプル環化付加を試みたところ、トリプチセンの生成に成功し、エックス線結晶解析からトリメチルシリル基が同一面に配置されたシン置換であること、立体障害のためベンゼン環に歪が生じていることが判明した。この歪エネルギーを駆動力として様々な変換反応を試みた。その結果、トリメチルシリル基のハロゲン置換反応においては一つ目のハロゲンの導入が速く、2つ目3つ目は順次遅くなることが分かった。この結果を利用して、1-ブロモー8-クロロー18-ヨードトリプチセンの合成にも成功した。この化合物はキラリティーを有していることから、キラルトリプチセンの原料として有用である。このトリストリメチルシリルトリプチセンを塩基処理をすることで脱シリルプロトン化反応が進行した。これは9位の水酸基とシリル基がファンデルワールス半径内に接近しているため、5配位状態になっているためと考えられる。イノラートの特性を利用したステモナミンの不斉全合成に初めて成功した。これまではラクタムカルボニルの隣接位の脱酸素反応に6工程を要していたが、今回、ハロゲン化ー還元法を適用することで2工程に短縮することができた
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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