研究課題/領域番号 |
26293007
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 浩之 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (30274434)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薬学 / がん / 放射線 / ナノバイオ / 中性子捕捉療法 / ホウ素 |
研究実績の概要 |
1、ホウ素化コレステロールの開発とナノキャリア化:高い治療効果のためには、腫瘍内ホウ素濃度が30 ppm以上、腫瘍/血液内ホウ素濃度比が3以上を満たす薬剤の開発が目標となる。この条件を目的として、リポソーム二分子膜へのホウ素内封として、新たにホウ素化コレスレロールを開発し、リポソームを調製しナノキャリア化を検討した。 2、ホウ素薬剤の可視化技術の開発:ホウ素薬剤が実際の腫瘍組織内にどのように分布しているか?細胞レベルで検証することが本治療効果の向上に必須である。そこで、26年度では、細胞レベルおよびin vivoでのホウ素コレステロール化蛍光標識の可視化技術の開発のために、クリック反応が可能なホウ素化コレスレロールの合成に成功した。 3、ホウ素クラスターのカウンターカチオンの検討と高集積化:ホウ素イオンクラスターのカウンターカチオンを通常臨床に用いられているナトリウム塩から、多カチオン性ポリアミンに変えることで、リポソーム内封効率を向上させることに成功した。実際に、ナトリウム塩の場合、ホウ素リポソームは、ホウ素濃度で3000ppmが限界であったのに対し、スペルミジン塩を用いることで、14000ppmのホウ素高集積化リポソームを開発することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子捕捉治療のためには、非常に高濃度でのホウ素薬剤の投与が必要となっている。本研究の目的は、如何に効率よく腫瘍へホウ素を送達するかである。本研究では、リポソームをホウ素キャリアーに用いることでこの目的を達成しようとするものであり、リポソームへのホウ素高集積化が鍵となる。内封ホウ素薬剤としてホウ素イオンクラスターを選択し、そのカウンタ―カチオンをポリアミン塩に変えることで、高集積化に成功したことは、大きな成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度で開発したホウ素高濃度集積化手法を用いて、27年度では、さらにホウ素コレステロールとの組み合わせにより、さらに高濃度集積可能なホウ素リポソーム製剤を開発することにつながると考えている。また、現在停止中の京都大学医療用原子炉KURが、27年度中に再稼働する予定であると伺っているので、これらのホウ素薬剤を用いて中性子照射による抗腫瘍効果の検証を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に研究支援技術者の雇用のために人件費を370万円計上していたが、4~9月雇用後、研究者の都合により本研究課題の継続が出来なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
そこで、平成27年度4月より新たに非常勤研究支援技術補助者を週4日間雇用し、本研究を遂行する。
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