研究課題
ホウ素薬剤の可視化技術の開発27年度は、ホウ素コレステロールの可視化技術の開発を中心に研究を推進した。申請書にも記載したように、我々はアセチレン部位を導入したホウ素コレステロールの合成にすでに成功している。そこで、このアセチレン―ホウ素コレステロールコンジュゲートに対し、蛍光剤アジドを用いたクリック反応によりマウス大腸がん細胞内イメージングを行ったところ、ホウ素化コレステロールが細胞核周辺に集積することが分かった。一方、ホウ素クラスター認識抗体を用いて、細胞内局在を調べたところ、予想に反して免疫染色は上手く行かなかった。そこで、新しいホウ素クラスターのイメージング法について検討を行った。申請者はホウ素クラスターのもつB-H結合のラマン吸収波長が、他の生体内に存在する官能基とは重複しないいわゆる“生物の窓”領域に現れることに着目し、ラマン分光によるホウ素薬剤のイメージングを新しく着手した。通常、細胞質から得られるラマンスペクトルは、750―1800 cm-1と2800―3000 cm-1付近に現れる。申請者は、ホウ素クラスターが有するB―H結合のラマンスペクトルがこれらとは重ならない2523 cm-1に現れることを明らかにした。その結果ホウ素コレステロールの細胞内局在のラマンイメージングに成功した。28年度は、この結果を基に蛍光クリックイメージングと比較・検証するとともに、三次元共焦点ラマン顕微鏡を用いて、細胞内三次元マッピングに挑戦する。一方、27年度に予定していた中性子照射による細胞殺傷効果に関しては、京都大学の原子炉が再稼働しなかったことから、28年度に計画する。また、ペプチドリガンドを導入技術に関しては、28年度にまずcRGDペプチドを用いて行う。
3: やや遅れている
27年度に予定していた中性子照射による細胞殺傷効果に関しては、京都大学の原子炉が再稼働しなかったため、実施できなかった。28年9月頃から稼働予定とされていることから、マシンタイムに合わせて、研究計画を遂行する予定であり、本課題研究が終了する来年3月までには、実験を実施可能である。
ホウ素クラスター薬剤のイメージングには、アセチレン部位を導入しクリック反応を用いた方法が有力だが、アセチレン部位を有することから本来の薬剤の構造と異なるため、その動態は必ずしも本来の薬剤とは一致しない。また、ラマンイメージングは非破壊での測定も可能であることから、実際の臨床にも応用の可能性をもつ。さらに、ホウ素クラスターのB-H結合はヨウ素と容易に反応することから、放射性ヨウ素の導入によるPETイメージングも可能である。この2つの方法について28年度は強力に推進する。
28年3月に予定していた京都大学原子炉実験所での実験打合せが、28年度以降に延期になったため、その旅費分の経費を次年度に繰り越したため。
京都大学原子炉実験所での実験打合せ旅費に使用予定。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) 学会・シンポジウム開催 (4件)
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