研究課題
(1)昨年度までにX11およびX11Lのリン酸化特異抗体の作成を行い、マウス脳神経細胞内におけるリン酸化タンパク質の存在を解明する解析に取り組んだ。X11とX11Lはほぼ同じ構造を持つ神経特異的アダプタータンパク質と考えられて来たが詳細な脳内発現の違いは未解明であり、まずこの解析を行った。その結果、X11Lは脳神経に特異的な発現を示したがX11は神経支配を受ける非神経分泌組織に一定の発現が認められた。脳内における分布も両タンパク質特徴的であり、遺伝子ノックアウトマウスの解析から、両遺伝子の発現は補償されないことが明らかになった。これらの解析から、X11とX11Lは機能的に異なる可能性があり、同じ部位のリン酸化解析でも機能が異なる可能性が示唆された。これまでの成果は論文として投稿中である。(2)昨年度までの解析で、APPとAlcadeinを基質とした場合に、γセクレターゼの触媒ユニットPSに発症性変異が無くても基質のγ切断が変化することを見いだした。膜文革を用いて詳細な解析を行った結果、γ切断の変化を引き起こす原因としてγセクレターゼ構成因子の膜内局在の変化が考えられた。In vitro assay系で構成因子の局在変化と切断変化の相関性を解析した。
2: おおむね順調に進展している
これまでの解析から、X11とX11Lはほぼ同じ構造を持つファミリー分子であるため、同じ機能を持つと考え、我々がオリジナルに単離したX11Lを中心に解析を進めてきた。しかしながら、昨年度までの解析で発現・機能がかなり異なるためX11のリン酸化解析も開始した。γセクレターゼによる基質切断変化の仕組みが明らかになってきた。これは独創的な成果と考えられ、遺伝子変異をもたない孤発性患者で同様な減少が起こっているかどうかの解析に進めば、発症機構の一端を実証できる。
リン酸化サイトに変異を導入したX11およびX11Lを発現する神経細胞、およびX11およびX11Lの遺伝子を破壊した神経細胞における、神経伝達物質受容体の局在・分布変化を解析し、シナプス障害が起こるADの変化との類似性を解析する。臨床研究者の協力を得て、γセクレターゼによる基質切断変化の仕組みが遺伝子変異をもたない孤発性患者で、細胞と同様な減少が起こっているかどうかの解析を進める。本研究は28年度内に成果を論文として投稿する予定である。
抗体作成が遅れたため、支払いが次年度になった。
抗体作成費用と抗体力価・特異性の検証実験を行う消耗品等の物品費
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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