研究課題
本年度は、ユビキチン化によるASK1活性制御機構と免疫シグナル制御機構の解明を中心に検討を進めた。ユビキチン化は、ASK1といったストレス応答キナーゼの活性制御を介して、感染・免疫シグナル活性化の持続時間・強度の決定因子として機能する可能性がある。従って、我々が同定した、ASK1特異的なユビキチン化酵素Roquin-2や脱ユビキチン化酵素USP9X、さらにASK1活性促進分子である別なユビキチン化酵素TRIM48は、ASK1を介して感染防御や免疫応答制御に関わり、自己免疫疾患などの病態の治療標的の候補になると考えられるが、実際の関与については不明であった。今回我々は、Roquin-2およびTRIM48などのユビキチン化関連酵素の過剰発現やノックダウンによって、ASK1を介した免疫シグナルが調節され、炎症性サイトカインの発現量が制御されていることを明らかにした。これらの結果は、ASK1の正・負の制御分子によって免疫応答のバランス制御が行われていることを意味している。また、新規に同定したユビキチン化関連酵素TRIM48について、そのユビキチン化の標的分子の候補を同定し、TRIM48によるASK1活性制御メカニズムを明らかにした。さらに、ASK1シグナル複合体中の新たな感染ストレスセンサーやASK1活性制御因子の同定についても解析を進めており、その候補分子も幾つか同定している。現在、その候補分子の性状・機能解析を行っているところである。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、ASK1 制御因子の機能解析を通じて、感染ストレスを感知し、その強度に応じた免疫応答シグナルへと量的に変換する「ストレス受容-応答システム」の全貌と、炎症・自己免疫疾患の原因因子と発症メカニズムを解明により、新規標的分子同定や治療戦略開発に繋げることである。実際に、ASK1 制御因子として、我々が独自に同定・解析してきたRoquin-2、USP9X、TRIM48といったユビキチン化関連酵素について、ユビキチン化によるASK1活性制御メカニズムと免疫シグナル制御機構への関与を明らかにし、新たなASK1制御因子の候補も同定できたことから、本年度の目標・実施計画はほぼ達成した。これらASK1 制御因子の解析を進めることで、感染ストレスの強度に応じた免疫応答シグナルへと量的に変換するストレス受容-応答システムを分子レベルで解明できると考えている。
今後も、ASK1 制御因子として、我々が独自に同定・解析してきたRoquin-2、USP9X、TRIM48といったユビキチン化関連酵素群によるASK1を介した免疫シグナル制御機構の解明を中心に解析を進める。また同時に、感染ストレスセンサー分子による、ASK1を介した免疫シグナル制御機構についても明らかにしたい。特に、ASK1と共に働く活性酸素センサー分子の候補としてのレドックス分子Prx1や、ASK1結合分子でウイルスRNAなどのセンサー分子のファミリーであるDNAヘリカーゼ様分子DHX15について、ノックアウト・ノックダウン細胞や遺伝子改変マウスの作成を行うことで、炎症・自己免疫疾患モデルでの検討を含め、解析を加える。さらに、新たに同定したASK1制御因子の候補の機能解析も行う。これらの分子の解析を進めることで、感染などのストレスに対するストレス受容-応答システムの分子レベルでの解明を推進して行きたい。
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