研究課題
本研究では、マウス肝臓における正常細胞―異常細胞間の競合機構の解析を行い、免疫系とは異なる新たな細胞レベルの品質管理機構の解明を目的とする。申請者はこれまでに、変異遺伝子をマウス肝臓にモザイク状に導入する実験法により、Hippo-YAPシグナル伝達経路が破綻した異常肝細胞と正常肝細胞との間の競合モデルの確立に成功している。平成26年度は、YAPの各ドメインの役割と細胞応答制御に注目して解析を行った。その結果、1)YAP上の各ドメインの細胞内局在および生物活性の関係を検討し、PDZ結合ドメインが核内局在に必須の役割を果たすこと、遺伝子発現の調節を行い細胞増殖やがん化誘導に重要であることを示された。これらの結果は原著論文として報告した(BBRC 2014)。また、2)YAPが幹細胞の増殖と細胞分化の調節に重要であることが示唆されていたので、ゼブラフィッシュをモデル生物として用いて、より詳細な解析を行った。その結果、YAPは転写因子TEADと結合し前駆細胞の増殖を正に制御すること、一方、YAPは転写因子Rxと結合するとRx依存的な細胞分化を抑制することを見出した。本モデルを原著論文として報告した(PLoS ONE 2014)。さらに3)哺乳動物培養細胞MDCK細胞を用いて、YAPが細胞競合に関与するかを検討した。その結果、活性型YAP発現細胞を正常MDCK細胞とモザイク状態で培養すると、活性型YAP発現細胞が約60%の高頻度で突出することを見出した。本結果は、YAPが哺乳動物の細胞競合に関与することを示唆する(論文準備中)。
1: 当初の計画以上に進展している
原著論文論文2報にまとめることにできたため。また、新たな展開の研究成果も論文化直前の状態になったため。
平成26年度に得られた新知見を基に、肝臓恒常性維持におけるHippo-YAPの機能を明らかにして、細胞競合との関わりを明らかにする。
研究が予想外の展開を示したため、新たな実験を追加することにした。まとめて研究試薬を購入するため、平成27年度に繰り越した。
予定された実験用の研究試薬と新たに行う研究試薬をまとめて購入する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
PLoS ONE
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