研究実績の概要 |
本研究では、現代型不眠症治療・生活習慣病改善を目的とした生体リズム調整薬の開発を目指し、当初の研究計画にしたがって研究を進めた結果、生体リズムの最高位中枢として機能する視交叉上核ニューロンにおいて生体リズム調節能を有するオーファンG蛋白質共役型受容体分子Gpr176およびその下流のGzシグナルを見出だすことができた(Goto et al, Endocr J, in press; Doi et al., Nat Commun, 2016)。また、Gzシグナルと細胞内の分子時計機構の接点を探る目的において、その接点となりうる中核時計蛋白質PER2の蛋白質発現・リン酸化変動の概日性プロファイルをとらえるための簡便なアッセイ法を樹立することができた(Tainaka et al, Chronobiol Int, in press)。またさらに、脳内中枢時計と自律神経の関係を調べるなかで、アセチルコリン受容体作動薬であるカルバコールが視交叉上核の時計遺伝子の発現リズムの位相を位相依存的に調整する能力があることを示すことができた(Dojo et al., J Biol Rhythms, in press)。以上の研究結果は、視交叉上核の時計機能を調節する新たな受容体シグナル系の存在を示すものである。生体リズム調整薬の開発に向け、脳内中枢時計に存在する分子機構を標的とした今後の創薬研究の展開が期待される。
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