研究課題
本年度は、昨年度にPGAM5の新規結合タンパク質として同定したSRm160についての解析をさらに進めた。SRm160は選択的pre-mRNAスプライシングのco-activatorとして報告されており、実際、CD44のmini-geneを用いて解析を行ったところ、SRm160はCD44 variant exon 5 (V5)の成熟mRNAへの取り込みを促進することを確認した。それと同時に、SRm160のV5取り込み促進効果をPGAM5が抑制することが分かった。一方、不活性型PGAM5にはそのような抑制効果が認められなかったことから、PGAM5がSRm160のリン酸化レベルを調節することで、選択的pre-mRNAスプライシングの制御に関わることが示唆された。昨年度はアポトーシス刺激に応じて切断型PGAM5が細胞質に放出される状況があることを明らかにしたが、今年度は新たに、オートファジーの機構を使った積極的なミトコンドリア排除機構であるマイトファジーの過程においても、切断型PGAM5が細胞質に放出されてくることが見出した。本研究で着目しているもう一つのミトコンドリア局在プロテインホスファターゼPPTC7については、安定発現細胞株を作製し、ミトコンドリア内での局在を詳細に検討したところ、おもにマトリックス内に存在し、一部は内膜のマトリックス側に表在性膜タンパク質として局在していることを明らかにした。また、プルダウンアッセイにより、PPTC7結合分子をいくつか同定し、その解析に着手した。そのうちの一つの結合分子は、ミトコンドリアストレスに依存してPPTC7との結合が増強されることを確認している。また、内在性PPTC7を検出することを目的にモノクローナル抗体の作製を進め、いくつかのポジティブクローンを獲得した。
2: おおむね順調に進展している
ミトコンドリアストレスに応答して切断されたPGAM5がミトコンドリアから放出され、その一部が核タンパク質のリン酸化調節を介して選択的pre-mRNAスプライシングの調節に働くという新しいPGAM5の分子機能を見出したことは大きな進展である。また、機能未知であるPPTC7については結合分子の同定と解析が進んでおり、分子機能の解明に大きく近づいている。
ここまではおおむね順調に進展しているため、当初の研究計画どおりに研究を進めたい。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
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