研究実績の概要 |
種々のアレルギー炎症性疾患において、IL-13とTNF-αは重要な役割を果たしている。我々は、ビタミンA欠乏マウスでは腸間膜リンパ節の樹状細胞が、IL-13とTNF-αを選択的に高産生する新規炎症性ヘルパーT細胞2型を分化誘導し、IL-13依存性に経口抗原に対する強いIgG1、IgE抗体産生を誘導することを発見した。この新規Th細胞は、正常のナイーブCD4+ T細胞をIL-6の存在下、CD3/CD28に対する抗体で活性化しても一定の割合で分化誘導され、このTh細胞が幅広いアレルギー炎症に関与する可能性が考えられた。本研究では、このTh細胞分化誘導の分子機序とその制御におけるレチノイン酸の役割を明らかにして、アレルギー炎症性疾患に対する治療と創薬に向けた新たな基盤を構築することを目指した。ビタミンA欠乏下でこのTh細胞を誘導する主な樹状細胞サブセットとして、CD103-CD11b+ 腸間膜樹状細胞を同定し、そのIL-6産生能を確認した。また、IL-6が分化誘導に関わるとされる既知のTh細胞(Th17, Th22, follicular Th (Tfh))とは、このTh細胞は異なる性質を有していた。この新規Th細胞を誘導するIL-6の作用は、レチノイン酸受容体(RAR)に対するインバースアゴニストの添加によって著しく増強されたことから、RAR媒介シグナルが、樹状細胞を介してばかりでなく、T細胞に直接的にも作用し、この新規Th細胞の誘導を抑制することが示唆された。また、いくつかのサイトカインは、IL-6によるIL-13産生能の誘導を増強したが、その効果は条件によって変動し限定的であった。これらの結果に基づき、DNAマイクロアレイを利用して、この新規Th細胞誘導に必要な遺伝子を探索し、複数の候補遺伝子を見出した。 〔連携研究者〕徳島文理大学香川薬学部 大岡嘉治、竹内一、中妻彩
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