研究課題
プロテアソームはユビキチン化タンパク質を選択的に分解する細胞内の巨大なタンパク質分解装置であり、ほぼ全ての生命現象に必須の役割を果たしている。我々は浸透圧ストレスに応答してプロテアソームが核内で数10個のスペックル構造をとることを発見した。平成26年度は以下の知見を得ることに成功した。1.プロテアソームスペックル構成成分の解析:プロテアソームスペックルと共局在する核内タンパク質を免疫染色により探索したところ、RNAポリメラーゼII、ユビキチン、p97と共局在することがわかった。2.プロテアソームスペックル形成機構の解析:プロテアソームサブユニットなどに蛍光タンパク質をノックインした細胞株を作製し、ライブセルイメージングで解析したところ、浸透圧ストレス下において数秒でプロテアソームとユビキチンがFociを形成することを見出した。1時間ほどでプロテアソームスペックルは消失したため、プロテアソームスペックルは可逆的な構造体であることが明らかとなった。3.プロテアソームスペックル内のユビキチン化基質の同定:質量分析計によりストレスに応答してユビキチン化される基質タンパク質を解析したところ、スペックル形成と相関してユビキチン化される核内タンパク質を20種類程度同定した。4.スペックル形成を阻害する化合物の探索:化合物ライブラリーを用いて、スペックル形成に影響を与える化合物を探索したところ、主に転写やクロマチン構造に影響を与える化合物がヒットした。よって、プロテアソームスペックルは転写サイクルに関与することが明確となった。
2: おおむね順調に進展している
プロテアソームの新規核内構造体プロテアソームスペックルは浸透圧ストレスに応答して数秒で形成される。この現象の生理的意義を明らかにするべく、初年度はプロテアソームスペックルの構成因子の探索と動態解析を主に進めた。その結果、様々な核内タンパク質を同定することに成功し、プロテアソームスペックルが転写制御、クロマチン構造変化、ユビキチン依存的タンパク質分解といった細胞の基本的な制御機構と密接に関係することがわかった。このように研究は概ね順調に進展している。
今後は以下の解析を進め、プロテアソームスペックルの生理的意義に迫る。1.プロテアソームスペックル形成制御因子の同定・解析:プロテアソームスペックル形成を制御する機構を分子レベルで明らかにするため、siRNAノックダウンライブラリーを用いたハイコンテントスクリーニングを実施する。2.プロテアソームスペックルの標的遺伝子の同定・遺伝子発現解析プロテアソームスペックルは転写ファクトリー上に形成するため、プロテアソームは浸透圧ストレスに応答した遺伝子群の転写活性化に関与することが示唆される。そこで、DNAマイクロアレイにより、プロテアソーム阻害剤存在下、非存在下で変動する因子を転写レベルで網羅的に同定する。一方で、プロテアソームが染色体上のどの領域に集積しているのか、クロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-Seq)解析を行なう。3.プロテアソームの人為的局在制御システムの構築:FKBP、FRBタグをプロテアソームおよび核ラミンにノックインした細胞を作製し、ラパマイシン依存的にプロテアソームの局在を制御する実験系を確立する。ラパマイシン存在下(スペックル形成阻害)において、標的遺伝子の発現変動を解析することで、スペックル形成の生理的意義を見出す。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (3件) 備考 (3件)
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 450 ページ: 1110-1114
10.1016/j.bbrc.2014.06.119
http://www.igakuken.or.jp/pro-meta/
http://www.igakuken.or.jp/topics/2014/0306.html
http://news.mynavi.jp/news/2014/03/10/032/