研究課題/領域番号 |
26293018
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
佐伯 泰 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 副参事研究員 (80462779)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プロテアソーム / ユビキチン / 転写 / タンパク質分解 / クロマチン構造 |
研究実績の概要 |
プロテアソームはユビキチン化タンパク質を選択的に分解する細胞内の巨大なタンパク質分解装置であり、ほぼ全ての生命現象に必須の役割を果たしている。本研究では、申請者が最近見出したプロテアソームスペックル(ストレス応答性のヒトプロテアソーム新規核内構造体)について、その構成成分と形成機構を解析し、変異細胞を作製することでプロテアソームスペックル形成機構とその生理的意義を明らかにする。 平成27年度は以下の知見を得ることに成功した。 1.プロテアソームスペックル構成成分の解析:平成26年度にプロテアソームスペックルと共局在する核内タンパク質としてRNAポリメラーゼII、ユビキチン、p97を見出していたが、平成27年度は低濃度ホルマリン固定細胞よりプロテアソームを精製し、質量分析計による網羅的解析を行った。その結果、プロテアソーム結合のユビキチンリガーゼ、ユビキチン化基質のシャトル分子であるRAD23、プロテアソーム活性化因子PSME3等が同定された。RAD23はプロテアソームスペックルの形成に必要であり、プロテアソームスペックルはユビキチン化基質を標的としてプロテアソームが集積したタンパク質分解の場であることが強く示唆された。 2.プロテアソームスペックル内のユビキチン化基質の同定:平成26年度に浸透圧ストレス下でユビキチン化される核内タンパク質を約20種類同定したが、それらのうちクロマチン構造形成に重要な機能をもつタンパク質Xについて、半減期およびユビキチン鎖の種類、ユビキチンリガーゼの同定を試みた。その結果、タンパク質Xの半減期は約20分と短寿命であり、定量プロテオミクス解析よりリジン48を介したポリユビキチン修飾を受けることが明らかとなった。また、結合タンパク質よりユビキチンリガーゼ候補を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロテアソームスペックルは浸透圧ストレスに応答して数秒で形成される可逆的な新規核内構造体である。本年度はプロテアソームスペックルの構成因子を網羅的に同定することに成功し、本構造体がクロマチン構造や転写制御に関与するタンパク質をユビキチン依存的に分解する場であることが分子レベルで分かりつつある。このように研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたプロテアソームスペックル構成因子、スペックル形成制御因子について検証するとともに、ChIP-Seq法により、プロテアソームスペックルの形成の場を同定する。 1.プロテアソームスペックル形成機構の解明。これまでに同定したプロテアソームスペックル構成因子、形成制御因子について、遺伝子破壊またはRNAiノックダウンを行い、プロテアソームスペックル形成の階層性を解析する。 2.クロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-Seq)法によるプロテアソームスペックル形成の場の同定。プロテアソームスペックルはRNAポリメラーゼIIと共局在するとともにクロマチン制御因子の分解の場であることを見出している。プロテアソームスペックルはストレスに応用した遺伝子群の転写活性化に関与することが示唆されているが、クロマチン上のどこに形成するのか明らかにすることで、スペックル形成の生理的意義を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノックダウン実験に用いるsiRNAの納品が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通り、siRNAを用いたノックダウン実験を実施する。
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