研究課題
平成28年度は以下の知見を得ることに成功した。1.プロテアソームスペックルの動態および形状の解析:STED超解像顕微鏡を用いてプロテアソームスペックルの微細構造を解析したところ、ユビキチンおよびプロテアソームはいずれも繊維状の構造をとることが明らかとなった。次いでFRAPによりスペックル内のユビキチンおよびプロテアソーム動態を解析したところ、ユビキチンは拡散が遅いが、プロテアソームは比較的動的であることがわかった。さらに、プロテアソームサブユニットGFPノックイン細胞を用いて、プロテアソームスペックルを電子顕微鏡により観察したところ(CLEM法)、プロテアソームスペックルはユビキチン化された核内凝集体上に形成することを見出した。スペックル形成は浸透圧刺激依存的であり、プロテアソーム阻害剤やVCP阻害剤によりそのクリアランスは遅延する。また、PML非依存であることを併せて考察すると、本構造体は核内タンパク質分解の場となる新しい核内構造体であることが示唆された。2.プロテアソームスペックル形成機構:ユビキチン化基質運搬分子RAD23とプロテアソーム結合型ユビキチンリガーゼUBE3Aのノックアウト細胞を解析したところ、これらの分子はプロテアソームスペックル形成と維持にそれぞれ必要であることが明らかとなった。これらの結果より、プロテアソームスペックル形成機構は以下のように想定される。(1)核内のタンパク質分解は高浸透圧による細胞容量減少に対して脆弱であり、核内のユビキチン化基質が凝集する。(2)RAD23依存的にプロテアソームが凝集体に集積する。(3)UBE3Aが凝集体をさらにユビキチン化する。(4)凝集体をプロテアソームが分解することでスペックルが消失する。最終年度は本仮説を更に検証する。
2: おおむね順調に進展している
プロテアソームスペックルは浸透圧ストレスに応答して数秒で形成される可逆的な新規核内構造体である。本年度はプロテアソームスペックルの微細構造と動態を解析することで、本構造体が核内タンパク質分解の場となる新しい核内構造体であることが示唆された。また、アンジェルマン症候群の責任遺伝子としてしられるユビキチンリガーゼUBE3Aがプロテアソームスペックル形成に関与することから、UBE3Aがプロテアソームコファクターとして核内のタンパク質分解に寄与する可能性が高い。このように研究は概ね順調に進展している。
1.プロテアソームスペックル形成機構:ユビキチン化基質運搬分子RAD23とプロテアソーム結合型ユビキチンリガーゼUBE3Aはプロテアソームスペックル形成と維持にそれぞれ必要である。H29年度はRAD23およびUBE3Aの機能ドメインを明らかにするため、各ノックアウト細胞にadd-backし、ユビキチン陽性凝集体へのプロテアソームのリクルート機構、凝集タンパク質のユビキチン化増強について解析する。2.プロテアソームスペックル形成の生理的意義:プロテアソームスペックルに局在化する内在性基質をモデル基質としてその凝集性とプロテアソーム依存的分解を解析する。脂肪性アルコール(凝集性タンパク質の分散作用)、プロテアソーム阻害剤(凝集体肥大)、VCP阻害剤(脱凝集阻害)添加時のプロテアソームスペックル構造および動態をCLEM法およびタイムラプスイメージングにより解析する。
合成オリゴDNAの納品が遅れたため。
合成オリゴDNAを用いた変異導入実験を予定通り実施する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
J. Biochem.
巻: 161 ページ: 113-124
10.1093/jb/mvw091
Mol Cell
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
腎臓内科・泌尿器科
巻: 4 ページ: 30-38
http://www.igakuken.or.jp/pro-meta/