研究課題
アフリカツメガエル卵母細胞を用いた過剰発現システムにおいて、マウスSlc16a9が薬物の輸送活性を有していることを確認した。Slc16a9ノックアウトマウス(Slc16a9KO)を用いたin vivo試験を行った。マウスSlc16a9 mRNAの組織分布をリアルタイムPCRで検討した結果、腎臓に最も高い発現が認められた。Slc16a9KO腎臓では、Slc16a9 mRNAの発現低下が認められた。Western blotを行った結果、強制発現系におけるマウスSlc16a9蛋白は検出できたものの、腎臓や他臓器の膜画分では検出できず、引き続き検討を必要とする。FITC-inulinはSlc16a9KOで同等の血漿中濃度の時間推移を示し、GFRには変動は認められないものの、複数の薬物の体内動態を評価した結果、amantadineについて、血漿中濃度の変動ならびに尿中排泄速度の変動が認められた。組織-血漿濃度比については、脳ならびに腎臓において野生型マウスと同程度であったが、血漿中濃度の時間推移の変動は分布容積の変動が要因と考えられることから、他の組織での薬物量を測定する必要がある。血漿中濃度のゲノムワイド関連解析でSLC16A9ジェノタイプと関連していることが示唆されていたカルニチンについて、血漿ならびに組織分布において野生型マウスと同程度であったが、尿中排泄が低下する傾向が認められた。野生型マウスならびにSlc16a9KOの血漿ならびに尿のメタボローム解析を実施し、現在測定結果を解析中である。YM-155トランスポーターとして単離されたSlc35f2ノックアウトマウスを、CRISPR-Cas9システムにより作製した。ホモ型のマウスを複数得ることができたことから、交配を進め、体内動態試験を実施する。
2: おおむね順調に進展している
Slc16a9ノックアウトマウスについて、十分な個体数を得るとともに、体内動態試験の結果、野生型マウスに対して体内動態が変動する薬物を見出すことができた。本研究では、YM-155に対する未同定のトランスポーターを得ることを目的としていたが、Slc35f2であることが他のグループにより明らかにされた。本トランスポーターは腎臓ならびに脳(血液脳関門を含む)に発現が認められる事から、がん由来細胞以外に、正常組織における薬物輸送において重要なトランスポーターであることが考えられる。CRISPR-Cas9システムを用いて、ノックアウトマウスを作出し、in vivo動態試験を実施するための準備を進めた。
Slc16a9KOマウスにおいて引き続き、薬物の探索をすすめるとともに、amantadineについて、体内動態の変動要因を解析する。また、新たに薬物トランスポーターとして、同定されたSlc35f2に関して、in vitroならびにin vivo試験を実施し、薬物動態における重要性を明らかにする。
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