研究課題
本研究では、血液脳関門への薬物送達を実現するためのターゲッティング素子として、オーファントランスポーターに関する研究を実施している。血液脳関門に発現するオーファントランスポーターSLC16A9、SLC16A4ならびにSLC35F2に注目し、CRISPR Cas9システムによるノックアウト動物、ならびにin vitro強制発現系を用いたスクリーニングを行っている。SLC16A9について、血漿・尿のメタボロミクス解析から示唆された化合物について、LC-MS/MSを用いた定量試験を実施したが、一部結果を再現したものの、KOマウスライン依存性が認められ、変動がSLC16A9欠損によるものか議論の余地がある。本年度開始したSLC35F2について、ヒト、マウスcDNAの強制発現系を構築し、免疫染色による細胞膜への局在の他、YM-155の輸送活性が認められ、速度論パラメータ(Km、Vmax)を決定したほか、verapamilのKi値を算出した。ヒトとの間に顕著な種差は認められていないことを確認した。本細胞を用いて、基質の探索を継続する。イムノブロットにより、野生型マウスと樹立したノックアウトマウスの腎組織において、ノックアウトで消失するバンドを確認し、マウスSlc35f2と交叉する抗体を確認した。今後正常組織における膜局在を実施する。SLC16A4遺伝子KO(hetero)は自然交配が難航していたため、不妊が疑われた。体外受精を行い、少なくとも精子機能の異常が認められないことを確認した。今後、産仔のゲノム解析や表現型解析を実施する。
2: おおむね順調に進展している
3つのオーファントランスポーターについて、2系統のノックアウトラインを樹立し、1系統も体外受精によりラインを確保することができるものと期待される。1トランスポーターについて、薬物を基質とすることを確認することができた。本トランスポーターの解析を引き続き実施する予定でいる。
樹立したKO動物ならびに強制発現系について、薬物による阻害試験から基質となる化合物の探索を実施する。また、ノックアウト動物の体液のメタボローム解析を実施し、内在性化合物の観点からも探索を進める。
SLC16A4ノックアウトマウスの解析において、自然交配が困難となったため、体外受精を実施するなど、平成27年度に実施予定の解析に遅れが生じたため。
精子の受精能を確認していることから、本年度メタボローム解析の解析やin vivo体内動態試験を実施するため、実験動物経費や関連の消耗品として使用する計画である。
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Drug Metab Pharmacokinet
巻: 31 ページ: 57-66
10.1016/j.dmpk.2015.10.003
Mol Pharm
巻: なし
Drug Metab Dispos
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10.1124/dmd.115.064170