研究課題
抗体医薬品の薬効発現には標的分子との結合が関与しており,これらの標的分子の多くは糖タンパク質である.本研究では,抗体医薬品であるセツキシマブ(抗EGFR抗体)とその標的分子であるEGFRに着目し,糖鎖の多様性と薬効発現との関係を考察することを目的とする.今年度は主に以下の成果が得られた.昨年度,認識ドメインの異なる2種の抗EGFR抗体とLC/MSを用いて,EGFR高発現癌細胞株であるA431(ヒト上皮様細胞癌由来細胞株)より,セツキシマブとの結合性が異なるEGFR分子の存在を見出した.本年度はまず,この分子がA431細胞株だけではなく,ヒト胎児肺由来細胞株にも存在することを見出した.続いて,これらのEGFR分子と抗体との反応性の違いが,主に糖鎖に起因するかについて検討した.A431細胞株より,各抗体を用いてEGFR分子を各々回収し,全てのN-糖鎖を遊離させるN-グリコシダーゼFで処理することにより,糖鎖を除いたタンパク質部分の分子量差異の有無をウエスタンブロット法で確認した.その結果,各EGFRのタンパク質部分間で顕著な分子量差異は認められず,抗体との反応性の違いと糖鎖の分子多様性との関連が強く示唆された.その一方で,セツキシマブに非反応性のEGFR分子の存在は,抗EGFRリン酸化抗体を用いたセツキシマブによるA431細胞株の増殖阻害アッセイの結果からも支持された.EGFRは,リガンドであるEGF等との結合による自己リン酸化を通じて,がん細胞の増殖に深く関与している.これらの結果は,主に糖鎖の違いに起因するEGFRの分子多様性が,セツキシマブの薬効発現に影響を及ぼす可能性を示唆している.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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