研究課題/領域番号 |
26293041
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大場 雄介 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30333503)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / エンドサイトーシス / バイオイメージング / インフルエンザウイルス |
研究実績の概要 |
本研究は、従前の研究代表者の研究成果を元に、エンドサイトーシスと外来因子取込制御に関与する細胞内シグナル伝達マシナリーの全貌を理解することを目的としている。平成26年度は研究計画に従い、以下の成果を得た。 A エンドサイトーシスおよび外来因子取込制御マシナリーの全貌の解明:研究代表者らの研究成果により、複数のエンドサイトーシス経路を制御する分子マシナリーについての詳細な知見が得られて来たものの、未だミッシングピースが存在する。まず、外来因子より惹起される細胞内カルシウム上昇を制御する因子の解析を行った。 A-1 カルシウムとRhoファミリー活性化動態の高速イメージング:ウイルス粒子をカルボシアニン膜色素DiDで染色し、ウイルス粒子の吸着・侵入をライブセルで可視化した。2秒毎のタイムラプスイメージングを行った結果、細胞全体でのカルシウム上昇に先行する一過性のカルシウム上昇が、ウイルス粒子結合部位周辺で感染直後に観察された。これらの一過性上昇が細胞外カルシウムイオンのキレートとシアリダーゼ処理により消失した。以上より、ウイルス粒子の結合部位と初期課程でのカルシウム流入部位が近接して存在することが示された。 A-2 局所カルシウム上昇を担う分子の同定:上記の結果をもとに当該膜タンパク質を同定した。候補分子の阻害薬およびsiRNA等を用いて、ウイルス感染実験を行ったところ、ウイルス感染依存的なカルシウム濃度上昇とウイルス感染が抑制された。以上から、本研究で同定した候補分子がインフルエンザウイルスによる細胞へのカルシウム流入と感染に関わることが示唆された。 B 新規エンドサイトーシス制御因子の探索:また我々は、カルシウムの下流で機能するPI3Kの結合因子の探索平行して行っている。PI3K由来配列の結合因子を酵母ツーハイブリッド法と質量分析法により、それぞれ、4個および37個同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルシウム下流で機能する因子の探索において、一部計画からの遅れが見られるが、新規因子の探索は次年度予定分の実験までを達成できた。よって上記と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
カルシウム下流因子の探索が予定通り進まなかったので、新たな評価系を構築・検討した上でスループットの向上を目指す。他は当初の計画通り以下の研究を推進する。 B-2新規に同定された因子の機能解析: a) エンドサイトーシスによる物質取り込みを規定する因子の特定:特定された因子群についてsiRNAによる発現抑制および阻害薬(既知の場合)による機能抑制下でのエンドサイトーシス能をデキストランとトランスフェリンの取り込みで評価し、物質取り込み能が低下する因子を特定する。b) Ras-PI3Kが制御するエンドサイトーシスによる物質取り込み選択性とその制御の解明:各因子が関与する取り込み物質を探索する。具体的な候補としては、デキストランなどの外来物質、トランスフェリンやLDL等の内在性物質、インフルエンザウイルス・エボラウイルスの偽ウイルス粒子をはじめとする病原体からE-カドヘリン・インテグリンなどの膜表面蛋白質に至るまで様々な物質を想定している。各因子の機能抑制下において、上記物質の細胞への取り込みを評価することで、各因子が関与する取り込み物質の特異性を決定する。最終的には各因子および取り込まれる物質を可視化し、それぞれの物質取り込み経路を比較することで、物質取り込みの高度選択性をその制御機構を解明する。 C エンドサイトーシスを制御するシグナル伝達ダイナミクスのモデル化:上記計測で得たパラメータから、反応速度論的シミュレーション等によりモデル化を行う。測定値が持つゆらぎを確率統計論的解析プロセスにより抽出し、同種細胞間にある個性や、細胞種間の相違も比較可能なモデルを構築する。このようなアプローチは、細胞可溶化液を用いて多細胞の平均値を得る手法のみでは不可能な挑戦で、蛍光バイオイメージングでシングルライブセルでのパラメータを取得する本手法を用いて初めて可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本大学の3月分支出に対する会計処理日が4月であるため。
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次年度使用額の使用計画 |
セルソーター賃貸借3月分 355,320円 謝金 308,840円(3月勤務4月17日支払の為)
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