研究課題
脳内の神経細胞どうしを結ぶシナプスは、記憶・学習の分子素子として考えられ、その形成機構および動作制御について精力的に研究がなされている。近年、補体補体C1qやその機能ドメインを有するC1qファミリー分子が、中枢シナプスの形成や維持、そして除去(刈り込み)過程に寄与することが分かってきた。本研究では、各脳領域に選択的に発現するC1qファミリー分子群を解析することにより、中枢シナプス形成および制御機構の共通原理を明らかにすることを目標とする。今年度は、小脳顆粒細胞平行線維―プルキンエ細胞間シナプスの形成や機能を担うCbln1の挙動について解析を進めた。その結果、シナプス前部から放出されるCbln1はシナプス後部に発現するデルタ2型グルタミン酸受容体とシナプス前部に発現するニューレキシンと3者複合体を構築することで、同シナプスの形成・機能制御に関与することを、構造学および電気生理学的に解明した。具体的には、上記3者複合体の結合様式を、結晶構造解析をはじめとする種々の構造学的手法により明らかにし、この結合様式を阻害した変異型タンパク質を発現させたマウスでは、記憶・学習の分子基盤とされるシナプス可塑性機構が障害されることが電気生理学的に確認された (Elegheert, Kakegawa et al., Science, '16)。以上の結果は、脳内におけるC1qファミリー分子の挙動様式を理解する上で重要な所見であり、記憶・学習の分子基盤を知るための有益な情報になりうるものと考えている。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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